独自データ分析
「預けたいのに預け先がない」
ショートステイの地域格差
在宅介護を続ける家族にとって、ショートステイは数少ない「休める手段」。全国15,138施設を市区町村別に集計し、家族が休めない地域を特定しました。
補足:特養には2種類あります
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、定員30人以上の広域型特養と、定員29人以下の地域密着型介護老人福祉施設に分かれます。地域密着型は原則として施設所在地の市町村住民のみが利用可能で、広域型は市外からの申込も可能です。以下の記述は、特段断らない限り両者を合わせて「特養」としています。
ショートステイとは
ショートステイ(短期入所)は、要介護の方が施設に数日〜2週間程度泊まるサービスです。家族が旅行に行きたい、冠婚葬祭で家を空ける、あるいは単純に介護疲れで休みたい — そんなときに利用します。「レスパイトケア(休息のためのケア)」とも呼ばれます。
介護保険で利用でき、1泊あたり自己負担は1,000〜2,500円程度。しかし年末年始やお盆は予約が殺到し、普段でも人気施設は1〜2ヶ月前に満員になることがあります。施設数が少ない地域では、そもそも予約が取れない状態が常態化しています。
数字で見る格差
全国平均は65歳以上1万人あたり4.1施設。ゼロの市はありませんが、1万人あたり1施設を切る町があります。
最も少ない町
志免町(福岡県)
0.9
施設 / 1万人
最も多い市
潟上市(秋田県)
14.2
施設 / 1万人
ショートステイが足りない市 Top10
65歳以上人口1万人以上の市町村で、人口あたりのショートステイ施設数が少ない順のランキングです。
65歳以上 11,177人
ショートステイ 1施設
1万人あたり 0.9
福岡市の南東に隣接するベッドタウン。1.1万人の高齢者に対してショートステイが1施設のみ。隣の宇美町もワースト2位で、福岡市南東部が広域的にショートステイ不足。
志免町の介護サービス情報
65歳以上 10,425人
ショートステイ 1施設
1万人あたり 1.0
志免町の隣。施設の受け皿分析でもワースト8位。ショートステイも入所施設も足りないダブルパンチ。施設系サービス全般が福岡市に依存する構造。
宇美町の介護サービス情報
65歳以上 23,645人
ショートステイ 3施設
1万人あたり 1.3
特養分析でもワースト6位。沖縄県は入所系施設が全般的に少なく、デイサービスで在宅を支える構造。しかし家族が「泊まりで休む」選択肢が乏しい。
浦添市の介護サービス情報
65歳以上 22,718人
ショートステイ 3施設
1万人あたり 1.3
新千歳空港のある街。若い世代が多いイメージだが高齢者も2.3万人。北海道は全体で1万人あたり2.9と全国ワースト1位タイ。札幌周辺の市が特に不足。
千歳市の介護サービス情報
65歳以上 20,406人
ショートステイ 3施設
1万人あたり 1.5
東京都内で2番目に小さい市。面積6.4km²と狭く施設用地が限られる。東京都は1万人あたり2.9で全国ワースト1位タイ。多摩地域のコンパクトな市が特にきつい。
狛江市の介護サービス情報
65歳以上 52,816人
ショートステイ 9施設
1万人あたり 1.7
5.3万人の高齢者はTop10最大の規模。9施設あるが人口に対して全国平均の4割。隣の狛江市と合わせて多摩地域東部がショートステイ空白地帯。
調布市の介護サービス情報
65歳以上 23,229人
ショートステイ 4施設
1万人あたり 1.7
特養分析でもワースト8位。施設系サービスが全般的に少ない泉州地域。大阪府は訪問介護は全国1位だが、入所・ショートステイは全国ワースト級。
貝塚市の介護サービス情報
65歳以上 23,036人
ショートステイ 4施設
1万人あたり 1.7
特養分析でもワースト10位。名古屋のベッドタウンは入所系もショートも足りない。名古屋圏の在宅偏重構造の影響。
あま市の介護サービス情報
65歳以上 51,478人
ショートステイ 9施設
1万人あたり 1.7
大阪国際空港の西側。5.1万人の高齢者に9施設は全国平均の4割。調布市と並ぶ「人口規模の大きい市のショートステイ不足」。
伊丹市の介護サービス情報
65歳以上 11,108人
ショートステイ 2施設
1万人あたり 1.8
埼玉県西部の山間の町。秩父方面への入口に位置し、高齢化が進む地域。2施設では年末年始やお盆の予約は絶望的。
小川町の介護サービス情報
秋田県はなぜ充実しているのか
一方で、秋田県は1万人あたり9.4施設と全国1位。全国平均の2.3倍です。Top10の充実市にも潟上市・男鹿市・由利本荘市・仙北市と4市がランクインしています。
秋田の構造: 特養に併設されたショートステイが多い
秋田県は特養の数も全国上位。特養には併設型のショートステイが多く、特養が多い地域はショートステイも多くなる傾向がある。秋田県は人口減少率が全国最高だが、高齢者向け施設は手厚く整備されている。在宅介護の限界を自治体が認識し、施設で支える方針が反映されている。
なぜ不足するのか — 3つの構造
構造1: 大都市のベッドタウンに足りない
Top10のうち9市町が福岡・東京・大阪・名古屋・神戸の近郊。特養分析と同じパターン。住宅地として発展した地域には施設用地がなく、ショートステイの「泊まり」機能には一定の広さが必要なため、コンパクトな市ほど不利。
構造2: 東京と北海道がワースト県
東京都(2.9施設/万人)と北海道(2.9)が全国最低で並ぶ。東京は地価、北海道は広大な面積と人口減少が原因。両極端な地理条件だが、結果は同じ「足りない」に行き着く。
構造3: ショートステイは「あふれやすい」
特養は入所したら退所するまで使える。ショートステイは短期利用の「回転」で成り立っているため、お盆・年末年始・連休に予約が殺到する。施設数が全国平均並みでも、繁忙期には取れないことがある。平均以下の地域では、通常期でも取れない状態が常態化する。
都道府県別の充足率
|
| | 都道府県 | 1万人あたり | 評価 |
| 秋田県 | 9.4 | 全国1位 |
| 広島県 | 6.9 | 充実 |
| 山梨県 | 6.7 | 充実 |
| 香川県 | 6.3 | 充実 |
| 徳島県 | 6.1 | 充実 |
| 全国平均 4.1 |
| 大阪府 | 3.1 | 不足 |
| 高知県 | 3.1 | 不足 |
| 神奈川県 | 3.0 | 不足 |
| 東京都 | 2.9 | 全国最低タイ |
| 北海道 | 2.9 | 全国最低タイ |
ショートステイを探している方へ
ショートステイの仕組み・費用・予約方法の詳細は ショートステイの使い方|費用・30日ルール・予約のコツ完全ガイド を参照してください。
ショートステイはケアマネジャーを通じて予約するのが一般的です。利用を検討している場合は、早めにケアマネに相談し、複数の施設を候補にしておくことをおすすめします。
繁忙期の対策として、年末年始やお盆の利用は2〜3ヶ月前に予約を入れる、複数施設に声をかけておく、併用できるデイサービスも確保しておく、といった方法があります。
お住まいの地域の介護施設を探す
ショートステイ・特養・デイサービスなど、地域の施設情報を一覧で確認できます。
施設入所ガイドを見る
分析手法
厚生労働省「介護サービス情報公表システム」に登録されている短期入所生活介護(11,313施設)・短期入所療養介護(老健併設3,698施設・病院等127施設)の合計15,138施設を使用。市区町村コードで集計し、総務省「令和2年国勢調査」の65歳以上人口と照合。ランキングは65歳以上人口1万人以上の市町村を対象とし、政令指定都市は市全体で集計。
この記事は厚生労働省・総務省の公開データに基づく独自分析です。施設数は2026年3月時点の登録データであり、各施設の空き状況・予約状況は反映していません。
📋 検討候補が出てきたら
在宅ケアナビの利用者管理メモで、施設候補・連絡先・電話確認ログ・見学予約まで1か所に整理できます。登録不要・無料・端末内保存。
利用者管理メモを開く →