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在宅医療(訪問診療)の基礎
対象・費用・往診との違いを解説

通院が難しくなった家族に、医療をどう届けるか。訪問診療と往診の違い、在宅療養支援診療所の役割、2024年改定後の診療報酬と月額自己負担の目安を、厚労省・中医協の一次情報で整理しました。

在宅医療とは — 対象になる人

在宅医療とは、通院が難しくなった患者の自宅や高齢者施設に医師が訪問し、診察・処方・療養管理を行う医療のことです。厚生労働省の保険診療上の定義では、訪問診療は「在宅での療養を行っている患者であって、疾病、傷病のために通院による療養が困難な者に対して定期的に訪問して行われた診療」とされています。

対象は、寝たきり・重度の認知症・進行がん・神経難病・心不全や慢性呼吸器疾患の末期、退院後に医療管理が必要な方などが中心です。要介護度や年齢で一律に決まるわけではなく、あくまで「通院が困難か」という医師の判断が前提になります。

ポイント:「元気だけど外出が面倒」では在宅医療の対象になりません。あくまで身体的・認知的に通院が難しいことが条件です。

訪問診療と往診の違い

在宅医療の中心は「訪問診療」と「往診」の2つです。名前は似ていますが、制度上は別物です。

区分訪問診療往診
タイミング計画的・定期的(1〜2週に1回など)臨時・要請があったとき
目的療養管理・疾病進行の予防急変時の対応・看取り対応
診療報酬(2024年改定)在宅患者訪問診療料(I) 同一建物外 888点/同一建物居住者 213点往診料 720点(夜間・深夜・休日は加算)
通院可否の前提通院困難であることが条件通院可能な人も対象だが、2024年改定で定期訪問診療のない患者への往診料は引き下げ

実際の運用では、ひとりの患者さんに対して訪問診療を「ベース」にしつつ、急変時の往診を組み合わせる形が一般的です。2024年改定で「計画的に診ている患者への往診」が相対的に手厚く評価された一方、初対面の患者への単発往診は点数が抑えられました。背景には、24時間対応を担う在宅医療機関と、依頼ベースで駆けつける事業者との役割整理があります。

出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要 在宅(在宅医療、訪問看護)」、在宅患者訪問診療料(I)(C001)の施設基準。

在宅療養支援診療所(在支診)とは

在宅療養支援診療所(在支診)は、24時間体制で患者の相談に応じ、往診・訪問看護を提供できる体制を整えた診療所として厚生労働省に届け出た医療機関のことです。在宅医療の「要」になる制度上の枠組みで、医師・看護師の確保や連携体制が施設基準になっています。

機能強化型とは何か

在支診の中でも、緊急往診・看取り件数・連携医療機関数などの実績要件を満たしたものが「機能強化型」として、さらに手厚い報酬で評価されます。

厚生労働省が2025年7月23日に中央社会保険医療協議会で公表したデータ(2024年8月1日時点)によると、機能強化型在支診の届出数は以下のとおりでした。

単独型は1つの診療所で24時間体制を担う形態、連携型は複数の診療所や病院が連携して24時間を支える形態です。地方では単独で24時間体制を組むのが難しいため、連携型が主力になっています。

出典:中央社会保険医療協議会 総会資料(2025年7月23日)「令和6年度診療報酬改定後の主な施設基準の届出状況」。

在支診を選ぶときにチェックしたいこと

費用と自己負担の目安

在宅医療の費用は、公的医療保険(国民健康保険・健康保険・後期高齢者医療制度)が適用されます。75歳以上の多くの方が対象になる後期高齢者医療の場合、現役並み所得でなければ自己負担は1割か2割です。

月額の目安(1割負担・月2回の訪問診療+処方の場合)

重要:1割または2割負担の方は、高額療養費制度により外来医療費の自己負担に月額上限があります。一般的な所得区分では、外来の自己負担上限は月18,000円・年間上限144,000円です(所得により異なります)。訪問診療は外来扱いのため、この上限が適用されます。

3割負担の方や、在宅酸素・人工呼吸器管理など高額な医療管理が加わる場合は、上限額が変わるため、加入している健康保険の窓口で「限度額適用認定証」の申請について確認しましょう。

また、介護保険の居宅療養管理指導(医師が月2回まで訪問してケアマネや家族に療養指導する仕組み)は、訪問診療とは別に介護保険から算定されるため、介護保険の自己負担(1〜3割)が発生します。

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」、令和6年度診療報酬改定・介護報酬改定。

訪問看護・ケアマネとの役割分担

在宅医療は「医師だけで完結する」ものではありません。実際には、訪問診療医・訪問看護師・ケアマネジャーの3者で役割を分け合います。

職種主な役割保険の出どころ
訪問診療医診察・処方・治療方針の決定・看取り医療保険
訪問看護師医師の指示のもと、バイタル確認・点滴・褥瘡ケア・服薬管理・家族への指導医療保険または介護保険(状態で決まる)
ケアマネジャー介護サービス全体のケアプラン作成・サービス調整介護保険(自己負担なし)

医療保険の訪問看護になるのは、①厚労省告示「別表第七」に定める20疾病の方、②特別訪問看護指示書が出ている期間(原則月14日以内)、③精神科訪問看護の対象者、のいずれかに該当する場合です。それ以外は介護保険からの訪問看護となります。どちらに該当するかは、訪問看護ステーションと医師が判断します。

関連記事:訪問看護とは — 対象者・費用・訪問診療との違いでは、医療保険と介護保険の切り分けをさらに詳しく解説しています。

導入の流れと家族が準備すること

きっかけになる3つのタイミング

  1. 退院時:病院の地域連携室・医療ソーシャルワーカー(MSW)が退院前カンファレンスで在宅医を紹介してくれる
  2. 通院が難しくなったとき:主治医に相談するか、地域包括支援センター・ケアマネ経由で在宅医を探す
  3. 看取りを視野に入れたとき:在宅での最期を希望する場合、早めに24時間対応の在支診につないでおく

家族が事前に整理しておくと良いこと

この記事の要点

  • 在宅医療は「通院が困難な患者」が対象。要介護度ではなく医師判断が基準
  • 訪問診療=計画的・定期訪問/往診=臨時訪問。2024年改定で役割整理が進んだ
  • 機能強化型在支診は単独型273・連携型4,173施設(2024年8月時点)
  • 1割負担・月2回訪問の目安はおおむね月7,000円前後、外来月額上限は原則18,000円
  • 医師・訪問看護・ケアマネの3者連携で在宅療養は成り立つ

よくある質問

訪問診療と往診のどちらを選べばいい?
二者択一ではありません。通院が難しくなった方は、まず訪問診療でベースを作り、体調が急変したときに往診で補う、という組み合わせが標準です。2024年改定では、普段から診ている患者への往診が手厚く評価される設計になりました。
在宅医療を始めると、かかりつけ病院の外来は受けられない?
受けられます。ただし、訪問診療と同じ月に同じ疾患で他院の外来診療を受けると、在医総管などの管理料が算定できないケースがあります。専門医の外来を続けたい場合は、訪問診療医に併診の段取りを相談してください。
在宅医療はどこまでやってくれる?点滴や注射もできる?
在宅でも点滴・注射・褥瘡処置・在宅酸素・経管栄養管理・医療用麻薬の管理など、幅広く対応できます。MRIのような大型検査や手術は病院でしかできないため、必要時は病院紹介になります。
施設に入居していても訪問診療は受けられる?
有料老人ホーム・サ高住・グループホームなどでは、協力医療機関や訪問診療医が入るのが一般的です。特別養護老人ホームには配置医師がいますが、特養でも訪問診療を入れるケースがあります。ただし同一建物居住者の場合、訪問診療料の点数は単独訪問より低く設定されています。
在宅医をどうやって探せばいい?
①退院を控えているなら病院のMSW・地域連携室、②介護保険利用中ならケアマネジャー、③まだ介護保険を使っていないなら地域包括支援センター、が最初の窓口です。日本医師会の「地域医療情報システム(JMAP)」でも在支診の届出状況を市区町村単位で確認できます。

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本記事の数値は、厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」および中央社会保険医療協議会 総会資料(2025年7月23日、2024年8月1日時点の届出状況)を一次情報として確認しています。制度・点数は改定のたびに更新されるため、実際の費用は医療機関や個別の症状・加算の組み合わせで変動します。
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