訪問介護の2本柱 — 身体介護と生活援助
訪問介護は、ホームヘルパー(訪問介護員)が自宅を訪問して提供する介護保険サービスです。サービス内容は大きく「身体介護」「生活援助」の2区分に分かれます(および通院等乗降介助)。
| 区分 | 身体介護 | 生活援助 |
|---|---|---|
| 定義 | 利用者の身体に直接接触して行う介助 | 身体接触を伴わない日常生活の援助 |
| 主なサービス | 入浴・排泄・食事介助、更衣、移乗、体位変換、服薬介助、通院・外出付き添い | 調理、掃除、洗濯、買い物、薬の受け取り、ゴミ出し |
| 同居家族がいる場合 | 原則利用可 | 原則利用不可(やむを得ない事情があれば可) |
| 単位数(2024改定) | 20分未満163/20〜30分244/30〜60分387/60分以上567 | 20〜45分179/45分以上220 |
身体介護と生活援助は別の報酬体系で、同じ訪問で両方を行った場合も「身体介護+生活援助(連続型)」として別コードで算定します。
2024年改定後の単位数
2024年4月施行の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬は引き下げられました。処遇改善加算(令和6年度改定時点で14.5〜24.5%、令和8年度改定により2026年6月から最大28.7%に引き上げ)を事業所が取得することで、総収入の維持を図る設計です。
身体介護(1回あたり)
- 20分未満:163単位
- 20分以上30分未満:244単位
- 30分以上1時間未満:387単位
- 1時間以上:567単位(+30分ごと82単位加算)
生活援助(1回あたり)
- 20分以上45分未満:179単位
- 45分以上:220単位
1単位は地域区分で10.00〜11.40円(1級地〜その他)。1単位10円で計算すると、身体介護30〜60分の1回は3,870円(1割負担で約387円)、生活援助45分以上の1回は2,200円(1割負担で約220円)が目安です。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」訪問介護サービスコード告示(2024年4月1日施行)。
できること・できないこと
身体介護としてできること
- 入浴の介助(全身浴・部分浴・清拭)
- トイレ誘導・おむつ交換・排泄介助
- 食事介助、水分摂取の介助
- 着替え・整容(ひげ剃り・歯磨き。爪切りは糖尿病等がなく化膿もない場合に可)
- 体位変換・起き上がり・移乗の介助
- 通院や買い物の「付き添い」(利用者本人の外出)
- 一定の研修を受けたヘルパーは喀痰吸引・経管栄養も実施可(認定特定行為業務従事者)
生活援助としてできること
- 本人分の食事の調理・配膳・片付け
- 本人の居室・共有スペース(本人が使う部分)の掃除
- 本人の衣類の洗濯・たたみ・収納
- 本人の日用品・食料品の買い物
- 薬の受け取り代行(処方箋を持って薬局へ)
- 医療行為(注射・褥瘡処置・摘便・血糖測定・インスリン投与など)→ 訪問看護の範囲
- 家族の分の家事(同居家族の衣類洗濯・部屋掃除・食事作り)
- 庭の手入れ・草むしり・ペットの散歩や世話
- 来客の接待、冠婚葬祭の手伝い
- 大掃除・窓拭き・家具移動・模様替え(日常の範囲外)
- 金銭・貴重品の管理や代行契約
出典:厚生労働省「訪問介護における日常生活に必要のない行為」通知、同居家族がいる場合の生活援助の取扱いに関する通知。
同居家族がいる場合の制限
訪問介護でもっとも家族が混乱するのが「同居家族がいると生活援助が使えない」というルールです。正確には「原則として算定不可。ただし、やむを得ない事情があれば算定可」という制度設計です。
やむを得ない事情の例(厚労省通知から)
- 同居家族に障害や疾病がある(通院・入院中を含む)
- 同居家族が仕事で日中不在
- 同居家族自身も介護を要する状態
- 育児・妊娠中で家事が困難
- 遠方勤務で通勤時間が長い
判断はケアマネジャーのアセスメントと市区町村(保険者)の確認で行われ、「何となく不可」「何となく可」で決まるものではありません。個別の状況を具体的に書面化することが鍵です。身体介護はこの制限の対象外で、同居家族がいても本人への身体介護は問題なく利用できます。
生活援助の基準回数とケアプラン届出
ケアプランに位置付ける生活援助中心型の回数が、厚労大臣の定める基準以上になる場合、ケアマネは翌月末までに市区町村に届出が必要です。これは2018年10月から運用されているルールで、「利用を制限するもの」ではなく、自立支援・重度化防止の観点からケアプランの妥当性を確認する目的です。
| 要介護度 | 月あたりの基準回数(これ以上で届出) |
|---|---|
| 要介護1 | 27回 |
| 要介護2 | 34回 |
| 要介護3 | 43回 |
| 要介護4 | 38回 |
| 要介護5 | 31回 |
要介護度が上がるほど身体介護の比重が増えるため、生活援助の基準回数は要介護3でピーク(43回)、4・5では逆に下がる構造です。これは全国平均+2標準偏差をもとに算定されたものです。
出典:厚生労働省老健局振興課長通知(老振発0510第1号・平成30年5月10日)および後続の基準回数告示。
使い始めるまでの流れ
- 要介護認定を申請・取得(介護保険の申請方法を参照)
- ケアマネジャーを決める(居宅介護支援事業所を選定)
- ケアマネがアセスメントを行い、ケアプラン原案を作成
- 訪問介護事業所を選定し、事業所と契約
- サービス担当者会議でプランを確定、サービス開始
事業所選びで確認したいこと:
- 緊急時対応(夜間・早朝の訪問可否)
- 特定事業所加算の取得状況(スタッフの研修・勤続年数の目安になる)
- ヘルパーの性別指定・継続担当の可否
- 苦情・相談窓口の体制
この記事の要点
- 訪問介護は「身体介護」と「生活援助」の2区分。同じ訪問でも別コード算定
- 2024年改定で身体介護30〜60分387単位、生活援助20〜45分179単位
- 同居家族がいると生活援助は原則不可だが、やむを得ない事情があれば可
- 生活援助の月回数が基準を超えるとケアプラン届出(要介護1は月27回から)
- 医療行為は原則不可だが、喀痰吸引・経管栄養は研修修了ヘルパーで可