訪問リハビリとは — 提供主体と対象者
訪問リハビリテーション(訪問リハ)は、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が利用者の自宅を訪問し、身体機能や生活動作の回復・維持を目的としたリハビリを提供するサービスです。
事業所として訪問リハを提供できるのは、病院・診療所・介護老人保健施設(老健)・介護医療院に限られます。つまり「医師が常勤で在籍している医療機関・介護施設」が母体であり、独立した訪問リハ専門ステーションは制度上存在しません。これは訪問看護ステーションとの大きな違いです。
対象になる人
- 要支援1・2 または 要介護1〜5 の認定を受けた方
- 40〜64歳の場合は、末期がん・脳血管疾患・パーキンソン病関連疾患など厚労省が定める「16特定疾病」に該当し、かつ要介護認定を受けた方
- 病状・体力・認知機能的に通院や通所リハが困難な方
- 退院直後で生活動作の再獲得が必要な方
通所リハ・訪問看護リハとの違い
| 区分 | 訪問リハビリ | 通所リハ(デイケア) | 訪問看護リハ (PT/OT/ST訪問) |
|---|---|---|---|
| 提供主体 | 病院・診療所・老健・介護医療院 | 病院・診療所・老健・介護医療院 | 訪問看護ステーション |
| 場所 | 利用者の自宅 | 施設に通う | 利用者の自宅 |
| 時間単位 | 20分を1単位、週6回まで | 1〜2時間/3〜4時間/5〜6時間/6〜7時間/7〜8時間 | 20分を1単位、看護職員の訪問の代替 |
| 医師関与 | 事業所の常勤医が指示・計画書に関与 | 事業所の常勤医が指示・計画書に関与 | 主治医の訪問看護指示書 |
| 社会参加 | 個別性高い、買い物・外出訓練も可 | 他者交流・レク要素あり | 看護職員を置くのが難しい人員配置のときに注意 |
2024年改定では、訪問看護ステーションからのPT・OT・ST訪問について「理学療法士等の訪問」として基本単位や加算ルールが見直されました。看護職員の訪問が難しいステーションがリハ職訪問ばかりになる事例への対応です。訪問看護ステーションのPT/OT/ST訪問と、医療機関からの訪問リハは制度上別サービスであり、ケアプラン上の区分も異なります。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の概要(訪問リハビリテーション/訪問看護)」。
2024年改定後の費用(介護保険)
基本報酬(1回20分あたり)
- 訪問リハビリテーション:308単位/回(2024年6月改定で307→308)
- 介護予防訪問リハビリテーション:298単位/回(307→298に引き下げ)
1単位は地域区分で10.00円〜11.40円(1級地〜その他)。仮に1単位10円で計算すると、1回20分のリハ総額は約3,080円、自己負担1割で約310円、2割で約620円、3割で約920円が目安です。
よく使われる加算(2024年改定後)
- 退院時共同指導加算:600単位/退院時 — 入院中にリハ職が退院前カンファレンスに参加し、在宅でのリハ計画を共同で立てた場合に算定
- 認知症短期集中リハビリ実施加算:240単位/日(週2回まで)— 新設
- リハビリマネジメント加算:180単位〜(月1回など段階別)— 医師が本人・家族に計画を説明し同意を得たうえで実施
- 短期集中リハビリ実施加算:200単位/日 — 退院後3か月以内など集中期に算定
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」訪問リハビリテーション告示、居宅サービス等の区分支給限度基準額。
指示書とリハビリ実施計画書
訪問リハの実施には、事業所に所属する医師(または利用者の主治医と連携する医師)による指示と、リハビリ実施計画書が必須です。指示期間は最長3か月で、更新ごとに医師の診察と計画書の見直しが行われます。
流れ
- ケアマネジャーが訪問リハの必要性をアセスメント
- 主治医または事業所の医師が診察し、指示を出す
- PT・OT・STがリハビリ実施計画書を作成(本人・家族に説明し同意)
- 居宅サービス計画(ケアプラン)に位置づけて開始
- 少なくとも3か月に1回は医師の診察と計画の見直し
家族が知っておきたいこと
リハビリ実施計画書には「1か月後・3か月後の目標」「頻度」「担当セラピスト」が明記されます。漠然と「リハビリしてもらっている」ではなく、「歩行器で10m歩けるようになる」「トイレまでの移乗を自分でできる」のように、目標がはっきり書かれているかを見ることが大切です。
医療保険で訪問リハを受ける場合
介護保険の給付が医療保険に優先するのが原則ですが、以下の場合は医療保険の枠組みで、訪問看護ステーションからPT・OT・STが訪問してリハを提供することがあります。
- 末期の悪性腫瘍(厚労省告示「別表第七」に該当)
- 神経難病など別表第七の20疾病に該当する方
- 急性増悪時に主治医が特別訪問看護指示書を出した期間(原則月14日まで)
- 要介護認定を受けていない方
この場合は訪問看護の一形態としてのリハ(「理学療法士等の訪問」)となり、訪問リハビリとは制度上別サービスです。高額療養費制度の対象で、月額自己負担には所得区分に応じた上限があります。
関連記事:訪問看護とは — 対象者・費用・訪問診療との違いでは医療保険・介護保険の切り分けを詳しく解説しています。
退院後の使い方・導入の流れ
退院前に決めておくこと
- 入院中のリハを担当したPT・OT・STに、退院後に必要なリハ内容を書面でまとめてもらう
- 退院前カンファレンスに、在宅のリハ担当者(訪問リハ事業所やケアマネ)を同席させる → 退院時共同指導加算600単位の対象
- 要介護認定が出ていない場合、退院までに区役所・地域包括で申請(暫定ケアプランで即日開始も可)
事業所を選ぶポイント
- PT・OT・STの配置:目的(歩行訓練/生活動作/嚥下)に合う職種がいるか
- 訪問エリア:自宅から30分圏内が目安
- 医師との連携:訪問診療医との連携履歴があると導入がスムーズ
- リハ実施計画書の「目標」が具体的に書かれているか
この記事の要点
- 訪問リハは病院・診療所・老健・介護医療院からセラピストが訪問する介護保険サービス
- 2024年6月改定で基本報酬は308単位/20分(1割負担で約310円)
- 医師の指示とリハビリ実施計画書が必須。3か月ごとに見直し
- 訪問看護ステーションからのPT/OT/ST訪問は制度上別サービス
- 退院前カンファレンス同席で退院時共同指導加算600単位が算定できる