在宅看取りに訪問看護が不可欠な理由
在宅看取りは、訪問診療医(または在宅医)と訪問看護ステーションの連携で支えられます。医師は診断・処方・死亡確認の役割、看護師は日々の身体管理・症状緩和・家族ケアの役割を担います。
訪問看護が果たす主な機能は、症状の変化を早期に発見し医師に連携すること、苦痛症状(痛み・呼吸困難・不安)を緩和すること、家族に見取りの心構えと具体的ケア方法を指導すること、そして死亡時の連絡・エンゼルケアの支援です。
提供されるケア
症状緩和(疼痛コントロール)
- 医療用麻薬(モルヒネ等)の投与管理・レスキュー対応
- 呼吸困難の緩和(酸素療法の調整)
- 不眠・不安への対応
日常的ケア
- 清拭・口腔ケア・排泄ケア
- 褥瘡(床ずれ)の予防と処置
- 体位変換の指導
- 点滴・皮下輸液の管理
家族支援
- 症状変化の見通しの説明
- 介護方法の指導(飲ませ方、体位、吸引等)
- 心理的サポート(不安・疲労への寄り添い)
- 死亡時の対応手順の説明
- 看取り後のグリーフケア(数週間のフォロー)
多職種連携
主治医(訪問診療医)、ケアマネジャー、訪問介護・訪問入浴、薬剤師、歯科医師と密に情報共有。必要に応じて訪問頻度を増やし、24時間の緊急対応体制で支えます。
24時間対応体制加算
訪問看護ステーションが「24時間対応体制加算」を算定していれば、夜間・休日も電話相談・緊急訪問に対応します。終末期には必須の体制です。
介護保険の加算(2024年度)
- 24時間対応体制加算:月800単位(同一建物10人未満)
医療保険の加算
- 24時間対応体制加算:月6,800円
算定していない事業所は夜間・休日対応が限定的で、看取り期のサポート力が違います。終末期の利用では24時間対応体制加算を算定している事業所を選ぶのが基本です。
出典:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(令和6年度改定)/「診療報酬点数表 訪問看護療養費」(令和6年度改定)。
ターミナルケア加算
死亡日および死亡日前14日以内に2日以上訪問看護を提供した場合、ターミナルケア加算が算定されます。看取り期の訪問看護の質を担保するための加算です。
介護保険
- ターミナルケア加算:2,500単位(死亡月に1回)
医療保険
- 訪問看護ターミナルケア療養費1:25,000円
- 訪問看護ターミナルケア療養費2:10,000円(特別養護老人ホーム等で看取る場合)
要件として、本人・家族に対する説明・同意、多職種連携の記録、24時間対応体制の整備等が求められます。事業所にとって算定要件のハードルは高いため、算定実績の多い事業所は終末期ケアに熟練していると見なせます。
看護小規模多機能との関係
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、訪問看護+訪問介護+通い+泊まりを一体的に提供する地域密着型サービス。終末期の方にとって柔軟なケア体制を組める選択肢です。
- 医療ケアと生活支援を同一事業所がカバー
- 「泊まり」を活用して介護者の休息を確保
- 馴染みのスタッフによる継続ケア
ただし事業所数が少なく、地域によっては選択肢が限られます。一般の訪問看護ステーション+訪問介護+ショートステイの組み合わせでも同様の支援は可能です。
家族に必要な心構え
事前に決めておきたいこと
- 最期を迎えたい場所(自宅か病院か)を本人と確認
- 救急搬送するかしないかの家族間の合意
- 延命処置(胃ろう・人工呼吸器)の方針
- かかりつけ医・訪問診療医の決定
- 24時間対応の訪問看護ステーションとの契約
看取り期に必要な備え
- 介護ベッド、吸引器、酸素などの物品
- オムツ・パッド類(多めにストック)
- 体を拭くタオル、着替え
- 医師・訪問看護ステーションの緊急連絡先
- 葬儀社の連絡先(亡くなった直後に必要)
気持ちの準備
看取り期は数日〜数週間続くことが多く、家族の体力・気力が消耗します。「疲れたら訪問看護師に相談する」「レスパイト(一時預かり)を活用する」「自分を責めない」——家族ケアの視点を持つことが、本人を支える力になります。
この記事の要点
- 在宅看取りは訪問診療医+訪問看護の連携で実現
- 症状緩和・日常ケア・家族支援・多職種連携が訪問看護の機能
- 24時間対応体制加算を算定する事業所を選ぶのが基本
- ターミナルケア加算の算定実績は事業所の熟練度の指標
- 看多機はより柔軟な選択肢、ただし事業所数が限られる
- 事前の方針確認・物品準備・家族の気持ちの準備が重要