全体マップ — 介護保険施設・特定施設・住宅系
高齢者向けの住まい・施設は、制度上ざっくり3つの系統に分かれます。
- 介護保険施設(特養・老健・介護医療院):介護保険法上の「施設サービス」で、介護保険から直接給付される
- 特定施設(介護付き有料老人ホーム、介護付きのサ高住、介護型ケアハウス等):特定施設入居者生活介護の指定を受け、包括的に介護を提供
- 住宅系(住宅型有料老人ホーム、一般のサ高住):住まい+安否確認が基本で、介護は外部の訪問介護・通所介護を利用
さらに地域密着型サービスとして、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)があります。
介護保険施設(特養・老健・介護医療院)
特養(特別養護老人ホーム/介護老人福祉施設)
- 根拠法:介護保険法(施設サービス)/老人福祉法
- 運営主体:社会福祉法人・自治体
- 入居条件:原則要介護3以上。要介護1・2は以下の「特例入所」4要件のいずれかに該当する場合に入所可能:①認知症があり、日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られる/②知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られる/③家族等による深刻な虐待が疑われ、心身の安全・安心の確保が困難/④単身世帯等で、家族等の支援が期待できず、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分。市区町村の入所判定委員会が判断
- 施設区分:広域型特養(定員30人以上)と地域密着型介護老人福祉施設(定員29人以下)の2種類がある。地域密着型は原則として施設所在地の市町村住民のみが利用可能。広域型は市外からの申込も可能
- 位置付け:終の棲家としての長期入所。看取りまで対応する施設が多い
- 費用:月額8万〜15万円程度(居室形態・所得により変動)。所得が低い方は特定入所者介護サービス費で自己負担軽減
- 全国施設数:8,621施設(2024年、前年比+73)
老健(介護老人保健施設)
- 根拠法:介護保険法(施設サービス)
- 運営主体:医療法人・社会福祉法人など
- 入居条件:要介護1以上で、病状が安定し在宅復帰を目指す方
- 位置付け:病院と自宅の「中間施設」。医師・看護師・リハ職を配置し、リハビリ中心
- 入所期間の運用:原則3か月ごとに入退所判定。在宅復帰を目的とした「中間施設」として制度設計されており、施設類型(超強化型/強化型/加算型/基本型/その他型)ごとに在宅復帰率の要件と介護報酬が異なる。長期入所も制度上は可能だが、長期化すると退所を促されることがある
- 費用:月額8万〜14万円程度
- 全国施設数:4,214施設(2024年、前年比-36)
介護医療院
- 根拠法:介護保険法(2018年創設)
- 運営主体:医療法人など
- 入居条件:長期的な医療的ケアと介護が必要な要介護者
- 位置付け:介護療養型医療施設(2024年3月末で廃止)の転換先。医療と生活を両立する長期療養施設
- Ⅰ型療養床:介護療養病床相当。重篤な身体疾患や身体合併症のある認知症高齢者等、比較的重度の医療ニーズがある方が対象。医師配置は入所者48人に1人(最低3人)
- Ⅱ型療養床:容体が比較的安定した方が対象で、老健に近い位置づけだが法的には別制度。医師配置は入所者100人に1人(最低1人)
- 全国施設数:令和6年時点で約900施設弱(介護療養型医療施設(2024年3月末原則廃止、一部経過措置延長)からの転換が進む)
出典:厚生労働省「令和6年介護サービス施設・事業所調査」(2024年10月1日時点)、厚生労働省「介護医療院の開設状況等(令和6年4月1日時点)」。
特定施設(介護付き有料老人ホーム等)
特定施設とは、厚生労働大臣から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。介護サービスを包括的に提供する設計で、外部サービスを使わずに施設職員が介護を行います。
- 介護付き有料老人ホーム:要支援〜要介護5まで受入可。入居一時金ありの施設と月払いのみの施設がある
- 介護付きサ高住:サ高住でありつつ特定施設の指定を受けたもの。全サ高住の一部
- ケアハウス(軽費老人ホームC型):老人福祉法上の軽費施設。一般型(自立者向け、特定施設指定なし)と介護型(特定施設入居者生活介護の指定あり)があり、介護型のみがこの「特定施設」カテゴリに該当する。所得により費用が安くなる
費用の目安:入居一時金0〜数千万円、月額15万〜30万円程度(施設による幅が大きい)。特養と比べて料金は高めだが、入居待ちは少ないのが一般的です。
住宅系(サ高住・住宅型有料)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- 根拠法:高齢者住まい法(2011年創設)。国土交通省・厚生労働省共管
- 入居条件:60歳以上の者、または要支援・要介護認定を受けた60歳未満の者。同居者は配偶者、60歳以上の親族、要支援・要介護認定を受けた親族等
- 契約形態:賃貸住宅(建物賃貸借契約)が基本
- 必須サービス:安否確認と生活相談
- 介護:原則として外部の訪問介護・通所介護を利用(介護付きサ高住を除く)
- 費用の目安:敷金数十万円、月額10万〜25万円程度+介護保険サービス利用料
- 全国登録数:8,296棟・287,430戸(2024年5月末、国交省)
住宅型有料老人ホーム
- 根拠法:老人福祉法(届出制)
- 契約形態:利用権方式が多い
- 介護:外部の訪問介護を利用する形
- 特徴:食事サービスや生活支援がセットになった民間施設。介護付きに比べて職員配置が薄い
- 費用の目安:入居一時金0〜数百万円、月額12万〜25万円程度+介護保険サービス利用料
サ高住と住宅型有料の違い:サ高住は「住宅」として建築基準・契約形態が定められており、入居者保護が比較的手厚い。住宅型有料は老人福祉法上の「施設」で、契約内容や運営の質にばらつきが大きい傾向があります。
出典:国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の現状等」、厚生労働省「有料老人ホームについて」。
地域密着型(グループホーム)
- 正式名称:認知症対応型共同生活介護
- 根拠法:介護保険法(地域密着型サービス)
- 入居条件:要支援2または要介護1以上で、認知症の診断がある方
- 定員:1ユニット9人まで。家庭的な雰囲気が特徴
- 指定権者:市区町村。原則として施設所在地の住民しか入居できない
- 費用の目安:月額12万〜20万円程度
関連記事:グループホームの地域差分析で、全国の定員格差を詳しく解説しています。
一覧比較表
| 施設種別 | 入居条件 | 月額費用目安 | 看取り | 待機 |
|---|---|---|---|---|
| 特養 | 原則要介護3以上 | 8〜15万円 | ○(対応多い) | 地域により長い |
| 老健 | 要介護1以上・在宅復帰目指す | 8〜14万円 | △(長期入所前提でない) | 比較的短い |
| 介護医療院 | 医療的ケアが必要 | 10〜20万円 | ○ | 地域で差 |
| 介護付き有料 | 自立〜要介護5 | 15〜30万円+一時金 | ○ | 少ない |
| 住宅型有料 | 自立〜要介護 | 12〜25万円+介護費 | 施設による | 少ない |
| サ高住 | 60歳以上 または要介護認定を受けた60歳未満の方 | 10〜25万円+介護費 | 施設による | 少ない |
| グループホーム | 認知症・要支援2以上 | 12〜20万円 | △(対応拡大中) | 地域による |
※ 費用は食費・居住費・日常生活費を含む目安。地域・居室形態・所得・個別施設で大きく変動します。
状況別の選び方
費用を抑えたい・要介護3以上
まず特養を検討。所得が低い方は負担限度額認定で月額5万円台にできるケースもあります。待機が長い地域では、介護付き有料(低額帯)やグループホームも並行検討。
退院後のリハビリが必要
老健が第一選択。在宅復帰を目的としたリハビリ期間を過ごしながら、病院と在宅の中間で体調を整えます。入退所判定は原則3か月ごとですが、リハビリ期間中に在宅のサービス体制(訪問リハ・デイケア)を整える時間として活用できます。
医療的ケア(吸引・経管栄養・人工呼吸器)が継続的に必要
介護医療院が現実的な選択肢。医師が常勤配置され、24時間対応の医療的管理ができます。療養型病床からの転換施設が多いため、地域差があります。
認知症があり、少人数の家庭的環境が合う
グループホーム。1ユニット9人以下の共同生活で、職員との関係も安定します。看取り対応は施設ごとに差があります。
経済的余裕があり、自分で選びたい
介護付き有料老人ホーム。価格帯・ロケーション・サービス内容の選択肢が広く、見学して選べます。ただし契約書の長期費用条項は必ずチェックを。
まだ元気だが将来が不安・1人暮らしが難しくなってきた
サ高住か住宅型有料。自立した生活を維持しつつ見守りが入ります。介護が必要になったら外部の訪問介護・定期巡回型を併用する形です。
この記事の要点
- 介護保険施設(特養8,621/老健4,214/介護医療院)は介護保険から直接給付
- 特定施設(介護付き有料等)は包括介護、住宅系(サ高住8,296棟/住宅型有料)は外部介護
- グループホームは認知症・地域密着型で1ユニット9人以下
- 特養は費用低+待機長、有料・サ高住は費用高+即入居しやすいトレードオフ
- 状況(要介護度・医療ニーズ・認知症の有無・経済余裕)で第一選択が変わる