独自データ分析

ケアマネ不足の地域格差|居宅介護支援事業所の全国分析

居宅介護支援事業所の地域格差を全国データで分析。ケアマネ1人あたりの担当高齢者数、事業所の充足率、不足が深刻な地域を都道府県別に見える化しました。

この記事でわかること
  1. ケアマネ不足とは
  2. 全国の居宅介護支援事業所の状況
  3. 都道府県別のケアマネ充足率
  4. ケアマネ不足が深刻な地域ランキング
  5. ケアマネ不足が起きる構造的要因
  6. ケアマネ不足地域での対応策
  7. 2027年改正による改善の見通し
  8. よくある質問

ケアマネ不足とは

「ケアマネが見つからない」という相談が全国の地域包括支援センターに増えています。居宅介護支援事業所の数に対して要介護認定者が多すぎる状態、つまりケアマネジャー(介護支援専門員)の供給が需要に追いついていない状況を「ケアマネ不足」と呼びます。

ケアマネ不足の基本構造
・ケアマネ1人あたりの担当件数の上限は原則35件
・上限を超えて担当するケアマネが増加し、質の低下が懸念される
・地方部では空きのある事業所自体が見つからないケースも
・都市部でも特定の区・地域で不足が起きている

ケアマネジャーはケアプランの作成だけでなく、サービス事業者との調整、月1回以上のモニタリング訪問など多岐にわたる業務を担っています。1人のケアマネが担当できる件数には物理的な限界があり、地域によっては新規の利用者を受け入れられない事業所が続出しています。

全国の居宅介護支援事業所の状況

まず全国の数字を俯瞰します。居宅介護支援事業所は在宅介護の「入口」であり、要介護認定を受けた方がまず相談する窓口です。

指標 数値
全国の居宅介護支援事業所数 約39,000事業所(2025年時点)
ケアマネ有資格者数 約22万人
うち実際に稼働中 約15万人
潜在ケアマネ(資格はあるが未稼働) 約7万人
要介護・要支援認定者数 約700万人(2025年度)

有資格者22万人のうち、実際に居宅介護支援の現場で働いているのは約15万人にとどまります。残りの約7万人は「潜在ケアマネ」と呼ばれ、資格を持ちながら別の職種に就いていたり、更新手続きの負担から離職したりしています。

事業所あたりのケアマネ数

全国の居宅介護支援事業所のうち、約6割が常勤ケアマネ1〜2人の小規模事業所です。管理者がケアマネを兼務するケースが大半で、1人が休職・退職するだけで事業所の運営が立ち行かなくなるリスクを抱えています。

稼働ケアマネ15万人で700万人を支える構造
単純計算では1人あたり約47人の要介護認定者を抱えることになり、担当上限の35件を大きく超えます。実際には施設入所者や介護予防のケアマネジメントは地域包括支援センターが担当するため、居宅のケアマネが直接担当するのは一部ですが、それでも多くの地域で「パンク状態」にあります。

都道府県別のケアマネ充足率

厚生労働省「介護サービス情報公表システム」のデータをもとに、65歳以上人口1万人あたりの居宅介護支援事業所数を都道府県別に算出しました。この数値が高いほど、高齢者に対してケアマネの供給体制が充実していることを意味します。

充足率 上位5県

順位 都道府県 65歳以上1万人あたり事業所数 評価
1 大阪府 15.2 充足
2 東京都 14.8 充足
3 北海道 14.1 充足
4 福岡県 13.6 充足
5 愛知県 13.2 充足

充足率 下位5県

順位 都道府県 65歳以上1万人あたり事業所数 評価
43 山梨県 7.2 不足
44 秋田県 6.9 不足
45 島根県 6.5 深刻
46 高知県 6.2 深刻
47 鳥取県 5.8 深刻
算出方法
数値は厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の居宅介護支援事業所数と、総務省「人口推計」の65歳以上人口をもとに算出した概算値です。事業所の規模(所属ケアマネ数)は考慮していないため、実際の充足状況とは乖離がある場合があります。

上位と下位で約2.6倍の格差があります。大阪府の15.2に対し、鳥取県は5.8。同じ日本に住んでいても、ケアマネへのアクセスのしやすさはこれほど違います。

充足率が高い地域は大都市圏に集中しています。人口が多く介護報酬の収入が見込めるため事業所が参入しやすいことに加え、交通インフラが整備されており訪問効率が良いことが背景にあります。

ケアマネ不足が深刻な地域ランキング

都道府県単位だけでなく、市区町村単位で見るとさらに深刻な実態が浮かび上がります。65歳以上人口に対して居宅介護支援事業所が極端に少ない市区町村をランキングしました。

ケアマネ不足が特に深刻な市区町村 Top10
1. 奥尻町(北海道)-- 離島、事業所ゼロ
2. 三島村(鹿児島県)-- 離島、事業所ゼロ
3. 十島村(鹿児島県)-- 離島、事業所ゼロ
4. 青ヶ島村(東京都)-- 離島、事業所ゼロ
5. 御蔵島村(東京都)-- 離島、事業所ゼロ
6. 北大東村(沖縄県)-- 離島、事業所ゼロ
7. 檜枝岐村(福島県)-- 山間過疎地域、最寄り事業所まで車60分以上
8. 上北山村(奈良県)-- 山間過疎地域、最寄り事業所まで車50分以上
9. 野迫川村(奈良県)-- 山間過疎地域、最寄り事業所まで車60分以上
10. 大川村(高知県)-- 日本で最も人口の少ない自治体の一つ

離島と山間過疎地域が上位を占めますが、注目すべきは都市部にも不足地域が存在する点です。

都市部でも起きている「隠れケアマネ不足」

事業所の数だけを見れば充足している都市部でも、新規の受け入れを停止している事業所が増えています。以下は「空きがない」状態が報告されている都市部の例です。

政令指定都市は「市全体の数字」では充足に見えても、区単位・生活圏単位で見ると大きな格差が生じています。これは当サイトの他の分析記事(訪問介護の人手不足分析)でも指摘してきた構造的な問題です。

ケアマネ不足が起きる構造的要因

ケアマネ不足は「人口減少だから仕方ない」で片付けられる問題ではありません。以下の5つの構造的要因が複合的に作用しています。

1. 報酬水準の低さ

居宅介護支援の介護報酬は、他の介護サービスと比較して低い水準にあります。2024年度の介護報酬改定で居宅介護支援費は引き上げられましたが、事業所の収支は依然として厳しい状況です。訪問介護やデイサービスを併設していなければ単独での経営が難しく、ケアマネ専業の事業所は減少傾向にあります。

2. 更新制による資格失効者の増加

ケアマネ資格は5年ごとの更新が必要で、数万円の研修費用と数十時間の研修受講が求められます。この負担から更新を断念し、資格が失効する例が後を絶ちません。2027年の法改正で更新制は廃止される見通しですが、すでに失効した資格の取り扱いは今後の課題です。

3. ケアマネの高齢化

現役ケアマネの平均年齢は約50歳です。もともとケアマネ試験の受験には5年以上の実務経験が必要なため、取得時点ですでに30代後半〜40代が中心です。今後10年で大量退職の波が来ることが確実視されており、若い世代の参入が追いつかなければ不足はさらに加速します。

4. 地方部の人口減少と事業所の撤退

利用者が減れば事業所の収入も減ります。地方部では利用者の減少に伴い事業所が撤退し、残った利用者がさらに遠くの事業所を探さなければならないという悪循環が生じています。移動距離が増えればケアマネの訪問効率も落ち、1人が担当できる件数もさらに減ります。

5. 医療機関所属ケアマネの減少

かつては病院や診療所にケアマネが所属し、退院後のケアプラン作成を院内で完結できるケースがありました。しかし医療機関の経営効率化の流れの中でケアマネ部門を縮小・廃止する病院が増え、退院調整の受け皿が不足しています。

ケアマネ不足地域での対応策

実際にケアマネが見つからない場合、どのような手段があるのでしょうか。現時点で有効な対応策を整理します。

1. 地域包括支援センターに相談する(最も確実)

地域包括支援センターは各市区町村に設置されている公的な相談窓口です。管轄エリア内の居宅介護支援事業所の空き状況を把握しており、利用者とのマッチングを行ってくれます。自力で事業所を探すより、まずここに相談するのが最も効率的です。

2. 介護サービス情報公表システムで検索する

厚生労働省が運営する「介護サービス情報公表システム」では、全国の居宅介護支援事業所を地域・条件で検索できます。空き状況がリアルタイムで反映されるわけではありませんが、候補となる事業所の一覧を把握するのに役立ちます。

3. 小規模多機能型居宅介護を検討する

小規模多機能型居宅介護は、通い・訪問・泊まりを1つの事業所で提供するサービスです。施設内にケアマネが配置されているため、利用を開始すればケアプラン作成も含めて一体的にサポートを受けられます。居宅介護支援事業所が見つからない地域では有力な選択肢です。

4. 隣接市区町村の事業所を探す

居宅介護支援事業所は市区町村をまたいで利用することが可能です。自分の住む市に空きがなくても、隣接する市の事業所が対応してくれる場合があります。ただし訪問距離が長くなるため、事業所側が対応を断るケースもあります。

まず地域包括支援センターへ
ケアマネが見つからない場合、最も確実な相談先は地域包括支援センターです。お住まいの市区町村の担当センターに電話するだけで、空きのある事業所の紹介や、暫定的なケアプラン作成の対応をしてもらえます。

2027年改正による改善の見通し

2026年4月に閣議決定された介護保険法改正案には、ケアマネ不足の緩和に向けたいくつかの施策が含まれています。

更新制の廃止で潜在ケアマネの復帰を期待

ケアマネ資格の更新制が廃止されることで、更新手続きの負担から離れていた約7万人の潜在ケアマネの復帰が期待されています。一度取得した資格が失効しなくなるため、ライフステージに応じて柔軟に復帰できるようになります。

処遇改善加算の拡充

居宅介護支援の報酬体系にも処遇改善の仕組みが拡充される見通しです。ケアマネの給与水準が他の介護職種と比較して見劣りしない水準に引き上げられれば、新規参入のインセンティブになります。

ICT活用による業務効率化

ICTを活用した場合、ケアマネ1人あたりの担当上限が35件から45件に緩和される仕組みがすでに導入されています。ケアプラン作成支援AI、モニタリングのオンライン化、事務作業の自動化など、テクノロジーによる効率化が進めば実質的な供給能力は向上します。

ただし地方部の構造的問題は残る

更新制の廃止や処遇改善で全体の供給量が増えても、都市部と地方部の格差が解消されるわけではありません。地方部では利用者数の少なさから事業所の経営が成り立ちにくく、ケアマネが戻ってきても働く場所がないという問題が残ります。

このテーマについてはより詳しい分析を2027年介護保険改正とケアマネジャーの記事でまとめています。

よくある質問

ケアマネが見つからない場合はどうすればいいですか?

まずお住まいの地域の地域包括支援センターに電話で相談してください。管轄エリア内の事業所の空き状況を把握しており、マッチングの支援をしてくれます。市区町村の介護保険課に電話すれば、担当の地域包括支援センターを教えてもらえます。

ケアマネの担当件数の上限は何件ですか?

原則35件です。ただしICT(情報通信技術)を活用している事業所では最大45件まで担当することが認められています。上限を超えて受け入れると介護報酬が減算されるため、多くの事業所は上限付近で新規受付を停止します。

ケアマネ不足は今後改善しますか?

2027年度の介護保険法改正で資格更新制が廃止されることにより、潜在ケアマネの復帰が進み一定の改善が見込まれます。ただし地方部の構造的な問題(利用者減・事業所撤退の悪循環)はすぐには解消されないため、地域によって改善度合いには差が出る見通しです。

セルフケアプラン(自己作成)は選択肢になりますか?

制度上、利用者本人がケアプランを作成する「セルフケアプラン」は認められています。ただし、サービス担当者会議の開催、給付管理、モニタリングなどを自分で行う必要があり、実務的なハードルは非常に高いのが実情です。介護保険制度に精通していない限り、現実的な選択肢とは言いにくい状況です。

まとめ

ケアマネ不足は全国一律の問題ではなく、地域によって大きな格差があります。大阪府の充足率15.2に対して鳥取県は5.8と、約2.6倍の差があります。離島や山間部はもちろん、政令市内の一部区でも不足は深刻化しています。

2027年の更新制廃止で潜在ケアマネの復帰が進めば状況は改善に向かいますが、構造的に事業所が成り立ちにくい地域の問題は残ります。ケアマネが見つからない場合は、まず地域包括支援センターに相談してください。

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