2027年改正の全体像
2026年4月3日、政府は「社会福祉法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。介護保険法の改正を含むこの法案は、介護人材の確保、施設ケアマネジメントの制度化、孤独・孤立対策など多岐にわたり、ケアマネジャーの実務に大きく影響する内容が複数含まれています。
・2026年4月3日閣議決定(社会福祉法等の一部を改正する法律案)
・介護保険法・老人福祉法・社会福祉法等の改正を含む
・ケアマネ資格更新制の廃止(人材確保策)
・登録施設介護支援の創設(施設ケアマネジメントの制度化)
・孤独・孤立高齢者支援の制度整備
・身寄りのない高齢者への支援強化(社会福祉法改正)
以下、ケアマネジャーの実務に特に影響が大きい改正ポイントを順に解説します。
ケアマネ資格更新制の廃止
今回の改正で最も注目されているのが、ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格更新制の廃止です。
何が変わるのか
現行制度では5年ごとに更新手続きが必要ですが、改正後は一度取得した資格が継続して有効になります。ただし、業務を行うための研修受講義務は法令上明確に位置づけられ、正当な理由なく研修を受けない場合は都道府県知事が受講命令を発出、従わない場合は最長1年の業務禁止処分を科すことが可能です。雇用する事業者にも研修機会の確保が義務づけられます。
| 現行制度 | 改正後(2027年度〜) | |
|---|---|---|
| 資格の有効期限 | 5年(更新手続きが必要) | なし(一度取得すれば継続) |
| 更新手続き | 必要(失念すると失効) | 不要 |
| 研修 | 更新研修として実施 | 法令上の義務として実施 |
潜在ケアマネの復帰促進
ケアマネ資格を持ちながら業務に従事していない「潜在ケアマネ」は推計約12万5千人にのぼるとされています(2025年12月 共同通信調査)。更新手続きの煩雑さや費用負担が復帰の障壁となっていたため、廃止により復職を検討しやすくなることが期待されます。
登録施設介護支援の創設
住宅型有料老人ホーム(特定施設を除く)等の入居者に対するケアマネジメントを制度化する「登録施設介護支援」が新たに創設されます。
制度の概要
- 主に住宅型有料老人ホーム(登録制に移行する施設)が対象
- ケアプラン作成と生活相談を一体的・包括的に提供する新類型
- 包括報酬(定額制)を導入し、出来高払いの構造的問題を是正
- 利用者には原則1割の自己負担が発生
- 具体的な人員配置基準は今後の介護給付費分科会で決定
居宅ケアマネへの影響
これまで住宅型ホームの入居者のケアプランは、外部の居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成していました。新制度への移行が進むと、居宅ケアマネの担当件数に影響が生じる可能性があります。
特に住宅型ホームの入居者を多く担当しているケアマネジャーは、移行の動向を注視しておく必要があります。なお、ケアマネの配置形態や独立性の担保方法は今後の省令で定められます。
孤独・孤立高齢者支援の新制度
孤独・孤立対策推進法との連携を強化し、高齢者の孤独・孤立を防ぐための制度整備が行われます。
地域包括支援センターの機能強化
地域包括支援センターが孤独・孤立対策の地域拠点として位置づけられ、関係機関との連携体制が法律上明確化されます。介護保険サービスの利用者に限らず、地域の高齢者全体を対象とした見守り機能が強化されます。
ケアマネ実務への影響
日々の業務で利用者やその家族の孤独・孤立リスクに気づく機会が多いケアマネジャーにとって、連携先が制度上明確になることは大きな変化です。見守りニーズを発見した際に、どこにつなぐべきかが明確化されます。
配食サービスとの接点
自治体が実施する配食サービスには安否確認の機能が備わっており、孤独・孤立対策の一環として活用されるケースが増えると見込まれます。ケアマネジャーがケアプランに配食サービスを位置づける際、見守りの観点からの説明がしやすくなります。
身寄りのない高齢者への支援強化
社会福祉法の改正により、身寄りのない高齢者への支援体制が強化されます。
身寄りのない高齢者への支援
入院や施設入所の際に身元保証人が求められるケースは多く、身寄りのない高齢者にとって大きな障壁となっていました。改正により、日常生活・入院時・葬儀手続きのサポートなど、自治体や関係機関による支援の仕組みが整備されます。
成年後見制度について
成年後見制度の見直し(3類型の補助への一本化等)は、法務省の法制審議会で別途進められています。今回の社会福祉法等改正とは別の法案として、民法改正が予定されています。ケアマネジャーが利用者の権利擁護を支援する際に、今後の動向に注目してください。
ケアマネが関わる身元保証問題
現場では「身元保証人がいないため入所できない」「手術の同意者がいない」といった問題にケアマネジャーが直面することが少なくありません。制度的な後ろ盾ができることで、こうした場面での対応の選択肢が広がります。
その他のケアマネ関連改正
ケアプラン作成のICT活用推進
ケアプラン作成におけるICT(情報通信技術)の活用が推進されます。AIを活用したケアプラン作成支援ツールの導入環境が整備され、ケアマネジャーの業務効率化が期待されます。
処遇改善
介護人材全体の処遇改善が改正の柱の一つとなっており、ケアマネジャーの給与改善にも波及することが期待されています。処遇改善加算の見直しや、ケアマネジメントに対する適正な報酬のあり方が議論されています。
医療・介護連携の強化
医療機関と介護事業所の情報連携が強化されます。入退院時の情報共有の仕組みが制度化されることで、ケアマネジャーが医療機関との連携をよりスムーズに行えるようになります。
施行スケジュール
改正法案の施行までのスケジュールは以下のとおりです。
国会審議の状況によっては施行時期が変更される可能性があります。また、改正項目ごとに施行日が異なる場合もあります。厚生労働省からの続報を随時確認してください。
ケアマネが今からやるべきこと
施行は2027年度の予定ですが、今から準備を進めておくことで円滑に対応できます。
1改正内容の把握と事業所内での共有
本記事の内容を事業所内で共有し、自分の業務にどの改正が関係するかを確認しましょう。特に管理者は、スタッフ全員が改正の概要を把握できるよう情報共有の場を設けることが重要です。
2住宅型ホームを担当している場合は動向の把握
登録施設介護支援の創設により、住宅型有料老人ホームの入居者へのケアマネジメント体制が変わる可能性があります。現在これらの施設入居者を担当している場合は、制度の具体化(省令の内容)を注視し、経過措置の内容を把握しておきましょう。
3更新切れケアマネへの復帰推奨の情報共有
資格更新制の廃止は、更新期限が切れて離職した元同僚やケアマネ仲間にとって朗報です。周囲にそうした方がいれば、復帰を検討する材料として情報を共有してください。
4地域包括支援センターとの連携強化
孤独・孤立対策の制度化に伴い、地域包括支援センターの役割が拡大します。日頃から顔の見える関係を構築しておくことで、改正後の連携がスムーズになります。
まとめ
2027年介護保険改正は、ケアマネジャーの資格制度・業務範囲・連携体制に大きな変化をもたらす内容です。資格更新制の廃止は人材確保を、登録施設介護支援の創設は施設ケアマネジメントの適正化を、孤独・孤立対策は地域包括ケアの深化を目的としています。
施行までにはまだ時間がありますが、改正の方向性を早めに把握し、準備を進めておくことが重要です。当サイトでは各改正項目の詳細記事を随時公開していきます。