登録施設介護支援とは
「登録施設介護支援」とは、住宅型有料老人ホーム(特定施設を除く)等の入居者に対して、ケアプラン作成と生活相談を一体的に提供する新しいサービス類型です。現行の出来高払い(居宅介護支援)とは別の枠組みとして、包括報酬(定額制)で設計されています。
2026年4月3日に閣議決定された介護保険法改正案に盛り込まれ、公布後2年以内の施行が予定されています。
・主に住宅型有料老人ホーム(登録制に移行する施設)が対象
・ケアプラン作成と生活相談を包括的に提供する新類型
・包括報酬(定額制)を導入し、出来高的なインセンティブを排除
・利用者負担は原則1割(現行の居宅介護支援は自己負担なし)
・2026年4月閣議決定。具体的な人員基準・運営基準は今後の省令で決定
本記事は2026年4月3日の閣議決定案に基づく解説です。人員配置基準・報酬単価・経過措置等の具体的な運営基準は、今後の介護給付費分科会での議論を経て省令で定められます。確定情報ではない点にご注意ください。
なぜ新制度が必要なのか
現在、住宅型有料老人ホームやサ高住の入居者は制度上「居宅(自宅)」で生活しているとみなされ、外部の居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーがケアプランを作成しています。
しかし、この仕組みには以下のような構造的な問題が指摘されてきました。
形骸化する居宅ケアマネとの関係
住宅型ホームの入居者は、実態として施設内で提供されるサービスが中心です。外部のケアマネジャーが月1回訪問するだけでは、入居者の日常的な状態変化を把握しきれず、ケアプランと実際のサービスが乖離する問題がありました。
囲い込み問題
住宅型有料老人ホームの63.3%、サ高住の74.8%が介護事業所を併設しています。一部の施設では、併設事業所のサービスを区分支給限度基準額いっぱいまでケアプランに組み込む「囲い込み」が問題視されてきました。外部のケアマネジャーが施設の意向に抗いにくい構造があり、利用者にとって最適でないサービス計画が作られるケースがありました。
出来高払いの構造的問題
現行制度ではサービスを提供するほど報酬が増える出来高払い方式のため、サービス量を膨らませるインセンティブが生まれやすい構造です。新制度では包括報酬(定額制)を導入し、サービス量に連動しない報酬体系に変えることで、この構造的問題の是正を図ります。
施設とケアマネの連携不足
施設内の介護職員と外部のケアマネジャーの間で情報共有が不十分になりやすく、サービスの質にばらつきが出る要因となっていました。ケアプラン作成と生活相談を一体的に提供する仕組みにすることで、日常的な状態把握とサービス調整の改善が期待されています。
現行制度との違い
現行の居宅介護支援と、新設される登録施設介護支援を比較します。
| 項目 | 現行(居宅介護支援) | 新制度(登録施設介護支援) |
|---|---|---|
| 報酬体系 | 出来高払い | 包括報酬(定額制) |
| サービス内容 | ケアプラン作成 | ケアプラン作成+生活相談を一体提供 |
| 利用者負担 | 全額保険給付(自己負担なし) | 原則1割負担 |
| 対象者 | 在宅の要介護者全般 | 登録施設(住宅型有料老人ホーム等)の入居者 |
| ケアマネの配置 | 外部の居宅介護支援事業所 | 今後の省令で決定(生活相談員の配置も構想) |
包括報酬(定額制)の導入により、サービス量を増やすほど報酬が増える出来高払いの構造が解消されます。また、現行の居宅介護支援(ケアプラン作成)は利用者の自己負担がありませんが、新制度では原則1割の自己負担が発生します。具体的な報酬単価は今後の省令で定められます。
居宅ケアマネへの影響
この制度改正は、現在住宅型ホームの入居者を担当している居宅ケアマネジャーに大きな影響を与えます。
担当件数の減少
住宅型有料老人ホームの入居者を多く担当しているケアマネジャーは、施行後に担当件数が減る可能性があります。特に、住宅型ホームとの紹介関係をベースに運営している居宅介護支援事業所は、経営への影響が大きくなることが予想されます。
事業所経営への影響
住宅型ホーム入居者の担当割合が高い事業所ほど影響は深刻です。施行に先立ち、在宅(自宅)利用者の担当を増やすなど、経営の軸足を見直す必要が出てきます。
一方で「本来の役割に集中できる」面も
居宅ケアマネジャーにとっては、自宅で生活する利用者のケアマネジメントにより集中できるようになるメリットもあります。施設入居者への形骸化した訪問がなくなり、在宅の利用者一人ひとりに手厚い対応を行う環境が整います。
経過措置による段階的移行
施行後すぐにすべての担当が切り替わるわけではなく、経過措置の期間が設けられる見通しです。この間に段階的に移行が進められるため、事業所としては経過措置の具体的な内容を注視し、計画的に対応を進めることが重要です。
利用者・家族への影響
住宅型有料老人ホームに入居中の方、これから入居を検討する方にとっても、いくつかの変化があります。
新たに発生する自己負担
現行のケアプラン作成は利用者の自己負担がありませんが、新制度では原則1割の自己負担が発生します。月額の具体的な金額は今後の省令で決まりますが、家計への影響を事前に把握しておく必要があります。
ケアマネジメントと生活相談の一体化
新制度ではケアプラン作成と生活相談が一体的に提供されます。現行の月1回の訪問では対応しきれなかった日常的な状態変化への対応やサービス調整が、より迅速に行える体制になることが期待されています。
施設選びの新たな視点
今後、住宅型有料老人ホームを選ぶ際には、登録制に移行しているかどうかが新たな選択基準になります。登録施設は人員・設備・運営基準が厳格化され、財務諸表の公表も義務づけられるため、施設の透明性を比較するポイントになります。
現在入居中の方への影響
現在すでに住宅型有料老人ホームに入居している方については、経過措置の内容次第で影響の範囲が変わります。具体的な移行ルールは省令で定められる予定です。施設からの説明を待ちつつ、不明な点はケアマネジャーや施設に確認してください。
施行時期と今後のスケジュール
閣議決定
介護保険法改正案が閣議決定。「登録施設介護支援」の創設が正式に盛り込まれました。
国会審議・法律成立
国会での審議を経て、改正法が成立する見通しです。法案の修正や附帯決議の内容にも注目が必要です。
施行予定
改正法の施行。具体的な人員基準・運営基準・報酬単価は介護給付費分科会での議論を経て省令で定められます。経過措置の内容もこの段階で明らかになります。
・ケアマネの配置要件と独立性の担保方法
・包括報酬の具体的な単価(利用者の負担額に直結)
・禁止行為の詳細(併設事業所利用の条件付け等)
・経過措置の期間と移行ルール
・既存の居宅介護支援事業所への影響緩和措置の有無
よくある質問
今すぐ影響はありますか?
いいえ。施行は2027年度の予定です。2026年度中に国会審議が行われ、省令で具体的な内容が決まります。現時点で利用者やケアマネに直接的な影響はありません。
特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームにも適用されますか?
対象は住宅型有料老人ホーム(特定施設を除く)です。特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホーム(特定施設)にはすでに施設ケアマネが配置されており、今回の制度の対象外です。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)も対象外です。
ケアプランの自己負担はいくらになりますか?
原則1割負担です。具体的な報酬単価は今後の省令で決定されます。現行の居宅介護支援の報酬(要介護1〜2で約1,086単位、要介護3〜5で約1,411単位)が参考になりますが、新制度の単価は別途設定される見通しです。
入居者がケアマネを自由に選べますか?
改正案では、ケアマネジメント契約と居住契約は独立したものとされ、施設がケアマネの変更を強要することは禁止される方向です。ケアマネの選択肢の詳細は今後の省令で定められます。
現在の担当ケアマネとの関係はどうなりますか?
経過措置の期間中は現在の居宅ケアマネが引き続き担当できる見通しです。具体的な移行スケジュールや経過措置の内容は省令で定められます。
施設のケアマネが担当すると、囲い込みがかえって悪化しませんか?
この懸念は介護保険部会でも指摘されています。改正案では、包括報酬化(サービス量を増やすインセンティブの排除)、併設事業所利用を契約条件にすることの禁止、登録制による定期的な運営指導・財務諸表公表の義務化など、複数の仕組みで囲い込みの抑止を図っています。ただし、ケアマネの独立性の担保方法など、実効性に関する議論は今後も続きます。
まとめ
「登録施設介護支援」は、住宅型有料老人ホーム等の入居者に対するケアマネジメントを包括報酬化(定額制化)し、生活相談と一体的に提供する新制度です。出来高払いの構造的問題を是正し、囲い込み対策と入居者へのケアマネジメントの質向上が目的です。
利用者にとっては新たに自己負担が発生する一方、サービスの透明性向上が期待できます。居宅ケアマネにとっては担当件数の変動に備える必要があります。
具体的な人員基準・報酬単価・経過措置は今後の介護給付費分科会で決定されます。国会審議と省令の内容に注目してください。