あなたの市の施設数、足りていますか?
介護施設が見つからない原因は「全国的に足りない」だけではありません。地域によって施設の充実度には大きな差があります。
当サイトの分析(厚労省「介護サービス情報公表システム」2024年度データに基づく)では、65歳以上人口あたりの介護施設(特養・老健・GH・有料老人ホーム)の合計数に最大20倍の地域格差があることが明らかになっています。全国平均を大きく下回る地域では、「待てば入れる」という前提が通用しません。
また、特養だけで見ても格差は深刻です。65歳以上1万人あたりの特養定員数は、最も多い市と最も少ない市で16倍の差があります。
施設が足りない地域ほど、以下の5つの対処法を並行して動かすことが重要です。1つずつ試していては間に合いません。
対処法1:広域型特養への申し込みで枠を広げる
特養には広域型(定員30人以上)と地域密着型(定員29人以下)があり、広域型なら市外の住民も申し込めます。
これを知らない方が多いのですが、広域型特養は住所地に関係なく申し込みが可能です。隣接する市に空きがあるケースもあります。県境付近に住んでいる方は、隣の県の施設も検討対象になります。
ただし「申し込めば入れる」ではありません
紙の申込書を出すだけでは、待機リストの一番下に並ぶだけです。実際に順番が回ってくるには、
- 緊急度をどう伝えるか(後述)
- ケアマネが施設相談員とどう関係を持っているか
- 空き情報が出た瞬間に動けるか
この3点が決定的に重要です。「広域申し込み=枠が増える」ではなく、「広域申し込み+ケアマネの動き=可能性が増える」と理解してください。
・広域型特養:市外の住民も申し込み可
・地域密着型特養:原則、事業所と同じ市区町村の住民のみ
・グループホーム:事業所と同じ市区町村の住民のみ(地域密着型)
対処法2:老健に入所して次の一手を準備する
介護老人保健施設(老健)は「リハビリをして在宅復帰を目指す」施設です。入所は原則3ヶ月ごとに入退所判定があり、在宅復帰率によって施設の類型と報酬が変わる仕組みになっています。
老健は「待機場所」ではなく「在宅復帰を目指す場所」です
家族の間では「老健で特養を待つ」という言い方がされますが、2018年の制度改正以降、老健には在宅復帰圧力がかかっています。長期居座りは施設側が嫌がるケースが増えており、退所を促されることもあります。
そのうえで、老健を経由する価値は以下の点にあります:
- 医師・看護師が常駐しており医療ケアが充実している
- 特養より空きが出やすい
- 入所中にケアマネ・相談員と連携しながら、次の施設の情報を得やすい
「老健に入った=特養の順番で優先される」ではありません。老健在所中に、相談員・ケアマネと連携して次の動きを設計できるかが分かれ目です。
対処法3:グループホームは条件が合えば強い
認知症の診断がある方は、グループホーム(GH)も選択肢になります。9人単位の少人数制で、家庭的な雰囲気の中で生活できます。
ただし条件は限定的です:
- 認知症の診断が必須
- 医療ケアは弱い(看護師配置は基準なし)
- 重度化・医療依存が高まると退去を求められるケースがある
- 事業所と同じ市区町村に住民票がある方のみ利用可
「認知症中期で、医療ニーズが少なく、その市に住んでいる」という条件が揃えば強い選択肢ですが、重度化したときの次の受け皿を同時に考えておく必要があります。
対処法4:有料老人ホーム・サ高住を検討する
費用負担は大きくなりますが、有料老人ホーム(介護付き・住宅型)やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は比較的空きが見つかりやすい選択肢です。
月額費用の現実
「月15〜25万円」という数字が出回りますが、これは基本料金の話です。実際には以下が加算されます:
- 医療費・薬代
- おむつ代・日用品
- 通院介助・付き添い
- 各種オプションサービス
低価格帯の施設は人員配置や介護の質に差があり、見学・体験入居で現場を確認することが必須です。「空きがある=解決」ではなく、「お金で選択肢は広がるが、質の見極めが必要」と考えてください。
対処法5:ショートステイ・小多機で在宅を繋ぐ
施設入所が決まるまでの間、在宅介護を継続するための選択肢があります。
ショートステイ(短期入所)
月に1〜2週間利用することで、家族の介護負担を軽減できます。介護保険適用で、1泊あたりの自己負担は1,000〜2,000円程度(食費・居住費は別途)。
ロングショート(長期利用)は制度上存在しますが、連続30日ルールや自治体の指導があり、運用は慎重に。ケアマネと相談しながら組んでください。
小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護
「通い・訪問・泊まり」を組み合わせて使える在宅サービスです。施設入所までの"繋ぎ"として、また在宅継続の柱として有力です。地域密着型のため、事業所と同じ市区町村の住民のみ利用可。
医療ニーズが高い場合:介護医療院・療養病床
医療依存度が高い方は、介護医療院や医療療養病床も現実的な選択肢です。ケアマネや医療ソーシャルワーカーに相談してください。
もっとも重要な視点:ケアマネとの動き方
ここまで5つの対処法を挙げましたが、実際に入所を勝ち取れるかどうかは、制度の知識よりもケアマネとの動き方で決まります。
① 緊急度の「伝え方」
特養の入所順は申し込み順ではなく緊急度で決まります。ケアマネに以下を具体的に伝えてください:
- 独居で見守りがない状態
- 家族の介護限界(身体的・精神的)
- 医療処置の必要性
- 経済的困窮
- 虐待リスクの有無
「なんとなく大変」ではなく、具体的なエピソード・頻度・時間で伝えることが重要です。入所判定委員会に回る書類の説得力が変わります。
② 空き情報は公開されていない
施設の空き情報の多くは、ネットやパンフレットには出ません。ケアマネ・相談員の間で口頭・非公式に回ります。急な退去や入院で空きが出た瞬間に、声がかかった人から入っていきます。
③ タイミングに動けるか
「連絡があったら24時間以内に見学・書類提出できる」体制を家族側でも作っておく。これができないと、せっかく情報が入っても次の候補者に回ります。
④ ケアマネを変える選択肢もある
施設入所に強いケアマネ・弱いケアマネの差は現実に存在します。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所を変える検討も、必要に応じて。
よくある質問
まとめ
施設が見つからないときは、1つの方法に固執せず複数の対処法を並行して進めることが重要です。そして、制度上の選択肢を知ることと同じくらい、ケアマネとの動き方・情報の掴み方・タイミングへの対応が結果を分けます。
まず自分の市の施設充足度を確認し、ケアマネと戦略を立てましょう。地域包括支援センターでも施設入所の相談ができます。
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