ダブルケアとは
ダブルケアとは、育児と介護を同時に担っている状態を指します。親の介護が必要になる時期と、子どもの子育て期が重なることで発生します。
晩婚化・晩産化が進んだことで、30代〜40代の働き盛り世代にダブルケアが集中しています。内閣府の推計では、25万人以上がダブルケア状態にあるとされています。
「どちらも中途半端になってしまう」「自分の時間がまったくない」という精神的な負担は、単独の介護や育児よりも深刻です。介護と育児でサービスの窓口が完全に分かれていることも、当事者を追い詰める大きな要因になっています。
・晩婚化により出産年齢が上がり、親の要介護時期と子育て期が重なる
・少子化でケアを分担できるきょうだいが少ない
・共働き世帯の増加で、日中に介護・育児に専念できない
ダブルケアの実態データ
ダブルケアは「特殊なケース」ではありません。現場のデータを見ると、ケアマネジャーにとって日常的に向き合うテーマであることがわかります。
- ケアマネの5人に3人がダブルケア家庭を担当している(2025年調査)
- ダブルケア世帯の約7割が「相談先がわからなかった」と回答
- 介護と育児でサービスの窓口が完全に分かれているため、制度を横断的に案内できる人がいない
- ダブルケア当事者の離職率は、単独介護・単独育児よりも高い
介護の相談は地域包括支援センター、育児の相談は子育て支援センターと、窓口が完全に分かれています。「両方同時に困っている」ときに、一括で相談できる場所がほとんどないのが現状です。
ダブルケアで使える介護側の制度
介護保険サービスと介護に関する労働法上の制度を活用することで、ダブルケアの負担を軽減できます。
介護保険サービス
- 訪問介護(家事援助・身体介護) --- ヘルパーが自宅を訪問し、食事・入浴・掃除などを支援
- デイサービス(通所介護) --- 日中の預かり。その間に育児に集中できる
- ショートステイ(短期入所) --- 数日間の宿泊預かり。育児が特に忙しい時期のレスパイトに
- 配食サービス --- 食事の準備負担を大幅に軽減。安否確認も兼ねる → 配食サービスを地域で探す
労働法上の制度
- 介護休業制度 --- 対象家族1人につき通算93日、3回まで分割取得が可能
- 介護休暇 --- 年5日(対象家族が2人以上なら年10日)、時間単位で取得可能
ダブルケアで使える育児側の制度
介護を理由に加点されたり、利用枠が広がったりする制度があります。知っているだけで使える支援が増えます。
- 保育園の優先入園 --- 介護を理由に保育の必要性の点数が加算される自治体あり。自治体ごとに基準が異なるため要確認
- ファミリーサポートセンター --- 地域住民同士の子育て相互援助。送迎や一時預かりに対応
- 子育て支援センター --- 育児の悩みを相談できる場。ダブルケアについても相談可能
- 学童保育の延長利用 --- 介護事由で延長利用が認められるケースがある
- 育児休業の延長 --- 保育所に入れない場合、最長2歳まで延長可能
- 病児保育 --- 子どもの急な発熱時に預けられる。介護の予定と重なったときの最後の砦
ケアマネとしての対応ポイント
ダブルケア家庭を担当するケアマネジャーには、介護保険の枠を超えた視点が求められます。
アセスメントでダブルケア状態を把握する
初回面談やモニタリングの際に、「お子さんの育児はどなたが担当されていますか」と聞くだけでダブルケア状態を把握できます。見落としがちですが、アセスメントシートに記入欄がないことが多いため、意識的に確認する必要があります。
介護保険だけでなく子育て支援の情報も提供する
ファミリーサポートセンターや子育て支援センターの存在を伝えるだけでも、当事者にとっては大きな助けになります。パンフレットを手元に用意しておくと効果的です。
地域包括と子育て支援センターの橋渡し
介護と育児の窓口が分かれている問題を、ケアマネが橋渡し役として解消できます。地域包括支援センターの担当者に、家庭の育児状況も共有しておくとスムーズです。
家族全体を見たケアプランの視点
利用者本人だけでなく、主介護者の育児負担を考慮したケアプランを作成することが重要です。デイサービスやショートステイの利用日を、育児の繁忙期と合わせて調整するといった配慮が有効です。
レスパイト(休息)の確保を最優先に
ダブルケアの当事者は「休む時間がない」状態に陥りやすく、心身の限界を迎えてから相談に来るケースが多くあります。ショートステイや一時預かりなど、休息の確保を最優先に提案してください。
介護保険制度は育児側のサポートに対応していません。ケアマネが子育て支援の窓口を知っておくことで、ダブルケア家庭を「たらい回し」にせずに済みます。地域の子育て支援センターの連絡先を、名刺入れに一枚入れておくだけでも違います。
利用者家族としてできること
ダブルケアの当事者が「まず何をすべきか」を整理します。
介護と育児の「見える化」をする
1週間の時間の使い方を書き出してみてください。介護にかかる時間、育児にかかる時間、仕事の時間、自分の休息時間。書き出すことで「何が一番負担になっているか」が明確になり、支援を頼むポイントが見えてきます。
使える制度を一覧化する
この記事の介護側の制度と育児側の制度を参考に、自分が使えるものをリストアップしてみましょう。意外と「知らなかっただけで使える制度」が見つかります。
家族内での役割分担を話し合う
一人で抱え込むのが最大のリスクです。配偶者、きょうだい、親族と「誰が何を担当するか」を具体的に決めましょう。遠方に住むきょうだいでも、手続きの調べものや電話対応など、できることはあります。
完璧を目指さない
介護も育児も100点を目指すと必ず破綻します。「8割でOK」の考え方が大切です。配食サービスを利用して食事の準備を省く、家事代行を頼むなど、「手を抜ける部分は抜く」ことが長く続けるコツです。
一人で抱え込まず地域包括に相談する
地域包括支援センターは介護の相談窓口ですが、ダブルケアの状況を伝えれば子育て支援の窓口にもつないでもらえます。「何から話せばいいかわからない」という状態でも、まず電話してみてください。
地域の相談先一覧
ダブルケアに関連する主な相談先をまとめました。すべて予約なしで相談できます(一部を除く)。
| 相談先 | 対応分野 | 費用 |
|---|---|---|
| 地域包括支援センター | 介護全般 | 無料 |
| 子育て支援センター | 育児全般 | 無料 |
| ファミリーサポートセンター | 育児の相互援助 | 低額 |
| 社会福祉協議会 | 福祉全般・権利擁護 | 無料〜低額 |
| 市区町村の福祉課 | 制度案内 | 無料 |
| ケアマネジャー | 介護サービス調整 | 無料 |
「介護と育児の両方で困っている」と伝えるだけで十分です。地域包括支援センターは、子育て支援の窓口への橋渡しもしてくれます。
よくある質問
ダブルケアで仕事を辞めるべきですか?
まず介護休業(通算93日)や育児休業の制度活用を検討してください。離職すると収入減だけでなく社会的な孤立リスクも高まります。離職は「制度をすべて使い切った後の最後の手段」と考えてください。
介護と育児のどちらを優先すべきですか?
どちらも大切で、優先順位をつけること自体に無理があります。一人で両方をこなそうとせず、介護はデイサービスやショートステイ、育児はファミリーサポートなど、外部サービスを最大限活用して「両方とも人の手を借りる」のが正解です。
ダブルケアに特化した相談窓口はありますか?
自治体によっては「ダブルケア相談窓口」を設置しているところがあります。まずはお住まいの地域包括支援センターに「育児と介護の両方で困っている」と相談してみてください。適切な窓口につないでもらえます。
経済的な支援はありますか?
介護側では高額介護サービス費(自己負担の上限を超えた分が払い戻される制度)、育児側では児童手当や保育料の減額制度などがあります。市区町村の福祉課で「使える制度を全部教えてください」と聞くのが最も確実です。
まとめ
ダブルケアは一人で抱え込むと必ず限界が来ます。介護側のサービス(訪問介護・デイサービス・ショートステイ・配食)と育児側の支援(保育園・ファミリーサポート・病児保育)を組み合わせ、ケアマネジャーと地域包括支援センターを起点に支援体制を整えることが大切です。まずは「困っている」と声を上げることが、状況を変える第一歩です。