看護小規模多機能(看多機)の実態医療ニーズ対応の地域密着型
本記事は厚生労働省の公開データおよび各自治体の一次情報をもとに作成しています。一部にPR・広告を含む場合があり、その際は明示しています。
制度的位置づけ
看護小規模多機能型居宅介護(通称:看多機)は、2012年の介護保険法改正で創設(当時は「複合型サービス」)。2015年に現名称「看護小規模多機能型居宅介護」に変更されました。地域密着型サービスの1つで、原則として事業所所在地の市町村住民のみが利用可能。
制度設計の意図
- 中重度要介護者の在宅継続を支える
- 訪問看護と小多機を1事業所で統合し、利用者の切れ目ないケアを実現
- 終末期・退院後・医療依存度の高い方への対応強化
提供するサービス
看多機は4つの機能を1つの事業所で提供します。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 通い | 日中、事業所に通って介護・看護を受ける |
| 訪問(介護) | ヘルパーが自宅を訪問、身体介護・生活援助 |
| 訪問(看護) | 看護師が自宅を訪問、医療処置・健康管理 |
| 泊まり | 事業所で宿泊、夜間のケア |
利用者の状態に応じて、これら4機能を柔軟に組み合わせます。1か月の中で「平日は通い、週末は泊まり、急変時は訪問看護」等、単一サービスでは対応困難なニーズに応えます。
人員・設備基準
定員
- 登録定員:29人以下
- 通いサービス:1日あたり18人以下(登録定員25人以下は登録定員の1/2〜15人、26〜29人は16〜18人と段階的設定)
- 泊まりサービス:1日あたり9人以下
人員基準(1事業所あたり)
- 管理者:常勤1人(保健師・看護師等)
- 看護職員:常勤換算2.5人以上(うち1人以上が常勤の保健師又は看護師)
- 介護職員:通い時3:1(利用者3人に1人)、訪問1人以上
- 夜間の人員:泊まりあたり1人以上(宿直可)
- 介護支援専門員(ケアマネジャー):1人以上
設備基準
- 居間・食堂(機能訓練室兼用可)
- 宿泊室:9人以下分(個室が望ましい)
- 台所、浴室、便所
- 事務室、相談室
利用対象者
看多機の利用対象は要介護1以上の方で、特に以下のような方が想定されています。
- 医療ニーズが高い方(喀痰吸引・経管栄養・インスリン等)
- 退院直後で在宅移行の支援が必要な方
- 終末期・ターミナルケアを在宅で過ごしたい方
- 家族介護者のレスパイトが頻繁に必要な方
- 認知症で症状変動があり、柔軟な対応が必要な方
登録制の特性
看多機は登録制のサービスで、他の訪問介護・訪問看護・通所介護・短期入所は原則として併用できません(一部例外あり)。登録した看多機事業所が一元的にケアを提供する形です。
単位数(2024年度改定後)
看多機は月単位の包括報酬。要介護度別に月額の単位数が設定されます(令和6年度改定、令和8年度改定で単位数本体の変更なし)。
| 要介護度 | 単位/月 | 1割負担目安(1単位10円) |
|---|---|---|
| 要介護1 | 12,447単位 | 約12,500円 |
| 要介護2 | 17,415単位 | 約17,400円 |
| 要介護3 | 24,481単位 | 約24,500円 |
| 要介護4 | 27,766単位 | 約27,800円 |
| 要介護5 | 31,408単位 | 約31,400円 |
※ 1単位10.00〜11.40円。上記は基本単位のみで、宿泊費・食費・初期加算・看護体制強化加算・認知症加算・若年性認知症利用者受入加算・ターミナルケア加算等が別途。処遇改善加算(看多機は令和8年6月からの加算Ⅰロで最大17.7%)も加算。
出典:厚生労働省「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(令和6年度改定)/ 看護小規模多機能型居宅介護費。
小多機との違い
| 項目 | 看多機 | 小多機 |
|---|---|---|
| 看護師配置 | 常勤換算2.5人以上 | 配置義務なし |
| 医療ニーズ対応 | 吸引・経管栄養等可 | 限定的 |
| ターミナルケア加算 | 算定可 | 算定可(訪問看護連携要) |
| 単位数 | 月額高め | 月額標準 |
| 登録定員 | 29人以下 | 29人以下 |
看多機は小多機に訪問看護機能を上乗せしたもので、医療ニーズに対応できる点が最大の違い。中重度者向けの選択肢として位置づけられています。
全国事業所数と地域差
看多機は2012年の創設以降徐々に増加していますが、全国的に事業所数が少ないのが実態です。
- 令和6年10月時点で全国約1,100事業所(厚労省「令和6年介護サービス施設・事業所調査」)
- 都市部・中核市に集中する傾向
- 地方では近隣市町村に事業所が存在しない地域もある
- 一方、需要は潜在的に大きく、整備促進が政策課題
整備が進まない要因
- 看護師配置が必要で運営コストが高い
- 登録定員29人以下で収益性が限定的
- 訪問看護ステーションからの転換は可能だが、小多機機能の追加運営が負担
- 地域密着型のため広域展開しにくい
要点
- 看多機は訪問看護+小多機の統合型地域密着型サービス
- 4機能(通い/訪問介護/訪問看護/泊まり)を1事業所で提供
- 看護職員常勤換算2.5人以上、登録定員29人以下
- 医療依存度の高い中重度要介護者が主対象
- 月額包括報酬、要介護5で約31,400円(1割負担)
- 登録制で他の居宅サービス併用不可(一部例外)
- 全国約1,000事業所弱で地域差が大きい
よくある質問
Q. 看多機登録中に外部の訪問介護を使えますか?
原則として不可です。看多機の登録定員に入っている間は、他の訪問介護・訪問看護・通所介護・短期入所等の居宅サービスは併用できません。例外として、福祉用具貸与・住宅改修・居宅療養管理指導は併用可能。特殊な医療処置等で看多機ではカバーできない場合の併用可否は個別判断です。
Q. ターミナルケアに看多機は適する?
適しています。看護師常勤配置があり、訪問看護機能を備えているため、在宅看取りをサポートする中核サービスとして使えます。ターミナルケア加算の算定も可能。家族のレスパイトとして泊まり機能が使える点も大きな利点。訪問診療医との連携があれば、在宅看取りの実現可能性が高まります。
Q. 看多機は短期入所(ショート)の代わりになる?
看多機の「泊まり」機能は、ショートステイとは別の位置づけ。登録者のための宿泊機能で、1日9人以下という定員制。ショートステイと併用はできません。医療ニーズがあって頻繁に泊まりを利用したい方、家族のレスパイトを頻回に必要とする方には、ショートより看多機の方が柔軟な対応が可能です。
Q. 全国の看多機を探す方法は?
厚生労働省「介護サービス情報公表システム」で「看護小規模多機能型居宅介護」として検索可能。ただし地域密着型なので、所在地市町村の住民のみ利用可。住民票のある市町村内の事業所を探すのが基本です。ケアマネ・地域包括支援センターでも地域内の事業所情報を提供してもらえます。
Q. 看多機の加算で知っておくべきものは?
主な加算:初期加算(30日以内の期間算定)、看護体制強化加算(月額)、認知症加算(Ⅰ:920単位/月、Ⅱ:890単位/月、Ⅲ:760単位/月、Ⅳ:460単位/月の4区分。令和6年度改定で新設区分あり)、若年性認知症利用者受入加算、ターミナルケア加算(死亡月に2,500単位)、処遇改善加算。看護体制強化加算の算定状況で事業所の看護機能の強さが見えます。
出典:厚生労働省「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」/ 看護小規模多機能型居宅介護の人員・設備基準/「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(令和6年度改定)/ 看護小規模多機能型居宅介護費。本記事の事業所数は2026年4月時点の厚労省統計に基づく。