独自データ分析

退院後の受け皿ランキング
老健・訪問リハ・通所リハの地域格差

入院を終えて自宅に戻る。しかしリハビリの受け皿がなければ、回復は止まります。退院後の3サービス(老健・訪問リハ・通所リハ)を市区町村別に集計し、受け皿のない地域を特定しました。

16,949
全国の退院後リハビリ施設
3市町
3サービスすべてゼロ

退院後に必要な3つのサービス

病院を退院した高齢者が在宅でリハビリを続けるために、主に3つのサービスがあります。

老健(介護老人保健施設)は病院と自宅の中間施設。退院直後に入所し、リハビリを受けながら在宅復帰を目指します。全国に4,121施設

訪問リハビリテーションは理学療法士や作業療法士が自宅を訪問してリハビリを行うサービス。全国に5,091事業所

通所リハビリテーション(デイケア)は施設に通ってリハビリを受けるサービス。全国に7,737事業所

この3つが揃っていれば、退院後の段階に応じた選択肢があります。しかし、3つともゼロの市町村が存在します。

数字で見る格差

全国平均は65歳以上1万人あたり4.5施設。最も充実した徳島県は12.2、最も少ない東京都は1.4。約9倍の格差があります。

最も充実した県
徳島県
12.2
施設 / 1万人
最も少ない都
東京都
1.4
施設 / 1万人

3サービスすべてゼロの市町村

65歳以上人口1万人以上で、老健・訪問リハ・通所リハの3サービスがすべてゼロの市町村が3つあります。退院後のリハビリの受け皿が地域内に存在しません。

0
紫波町
岩手県
65歳以上 10,097人
老健 0
訪問リハ 0
通所リハ 0
盛岡市の南に隣接する町。1万人の高齢者がいるにもかかわらず、退院後のリハビリサービスが町内に皆無。盛岡市まで通える人しかリハビリを受けられない。
0
つくばみらい市
茨城県
65歳以上 13,791人
老健 0
訪問リハ 0
通所リハ 0
つくばエクスプレス沿線で人口が急増中の市。若い世代が流入する一方、高齢者向けリハビリ施設の整備が追いついていない。1.4万人の高齢者に受け皿ゼロ。
0
小千谷市
新潟県
65歳以上 12,135人
老健 0
訪問リハ 0
通所リハ 0
新潟県中越地方の市。2004年の中越地震で大きな被害を受けた地域。1.2万人の高齢者がいるが、退院後のリハビリは隣の長岡市に依存する構造。

退院後の受け皿が少ない市 Top10

3サービスゼロの市町村を除き、65歳以上人口1万人以上で受け皿が少ない順のランキングです。

1
十日町市
新潟県
65歳以上 19,856人
3サービス合計 1施設
1万人あたり 0.5
豪雪地帯で知られる市。訪問リハが1事業所あるのみで、老健も通所リハもゼロ。冬季は通院も困難になり、在宅リハビリの選択肢がほぼない。
2
函南町
静岡県
65歳以上 12,078人
3サービス合計 1施設
1万人あたり 0.8
伊豆半島の付け根に位置する町。訪問リハが1事業所のみ。三島市・沼津市に近いが、退院後に自力で通える高齢者ばかりではない。
3
つがる市
青森県
65歳以上 12,013人
3サービス合計 1施設
1万人あたり 0.8
津軽平野西部の市。老健が1施設あるのみで、訪問リハも通所リハもゼロ。退院後のリハビリは施設入所一択という状態。
4
浦安市
千葉県
65歳以上 30,319人
3サービス合計 3施設
1万人あたり 1.0
東京ディズニーリゾートで知られる市。3万人の高齢者に対して3施設は全国平均の2割。地価が高く医療施設の新設が難しい構造。
5
幸手市
埼玉県
65歳以上 17,743人
3サービス合計 2施設
1万人あたり 1.1
埼玉県東北部の市。老健1・訪問リハ1で通所リハはゼロ。埼玉県全体が3.2と全国ワースト4位で、特に北東部が手薄。
6
綾瀬市
神奈川県
65歳以上 23,386人
3サービス合計 3施設
1万人あたり 1.3
海老名市と藤沢市に挟まれた市。鉄道駅がなく交通の便が限られる。神奈川県は3.0と全国ワースト2位。県央地域の不足が深刻。
7
あま市
愛知県
65歳以上 23,036人
3サービス合計 3施設
1万人あたり 1.3
名古屋市の西隣。ショートステイ分析でもワースト8位に登場。名古屋のベッドタウンは施設系サービスが軒並み不足。
8
和光市
埼玉県
65歳以上 15,080人
3サービス合計 2施設
1万人あたり 1.3
東京メトロ有楽町線の始発駅がある市。「和光市モデル」として介護予防の先進地として知られるが、退院後のリハビリ施設は全国ワースト級。予防は充実、回復は不足という矛盾。
9
杉戸町
埼玉県
65歳以上 14,447人
3サービス合計 2施設
1万人あたり 1.4
東武動物公園の所在地。幸手市の南隣で、埼玉県北東部がリハビリ過疎地帯であることを裏付ける結果。
10
多摩市
東京都
65歳以上 42,621人
3サービス合計 6施設
1万人あたり 1.4
多摩ニュータウンの中心。1970年代に入居した世代が一斉に高齢化し、4.3万人の高齢者に6施設。東京都全体がワーストだが、多摩地域は特に深刻。

なぜ徳島県が全国1位なのか

徳島県は1万人あたり12.2施設で全国1位。2位の鹿児島県(9.3)を大きく引き離しています。

徳島の構造: 訪問リハと通所リハが飛び抜けて多い

徳島市だけで訪問リハ46・通所リハ47・老健15の計108施設。7.8万人の高齢者に対して1万人あたり13.9と全国トップクラス。徳島県は医師数が全国上位で、医療機関が通所リハや訪問リハを積極的に展開している。「病院から地域へ」の流れが最も進んだ県。

いちき串木野市の逆説

鹿児島県いちき串木野市は、退院後リハビリが1万人あたり13.8施設で全国6位の充実度。しかし、過去の分析では訪問介護がほぼ届かない地域としてワースト級に登場しています。

「退院後リハビリは充実、日常の在宅介護は不足」

いちき串木野市は老健4・訪問リハ3・通所リハ7と退院後サービスは充実。しかし訪問介護ヘルパーは極端に少ない。リハビリで回復しても、日常生活を支えるヘルパーがいなければ在宅生活は成り立たない。サービスの種類によって地域の充実度は全く異なるという典型例。

なぜ不足するのか — 3つの構造

構造1: 大都市圏のベッドタウンに足りない

Top10のうち7市町が首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)。住宅密集地域は施設用地がなく、地価も高い。通所リハには一定のスペースが必要で、コンパクトな市ほど不利。これは特養やショートステイの分析と同じ構造。

構造2: 訪問リハは医師の指示が必要

訪問リハは医師の指示書が必要で、病院・診療所が運営主体になることが多い。医療機関が少ない地域では訪問リハも少なくなる。十日町市・つがる市のような地方都市は、そもそも医療資源が限られている。

構造3: 東京の数字に注意

東京都は1万人あたり1.4と最下位。ただし東京23区は区ごとの集計が特殊で、実態はもう少し高い可能性がある。それでも多摩地域の不足は明確で、多摩市(1.4)をはじめ深刻な状況。東京に住んでいるからリハビリに困らない、というのは幻想。

都道府県別の充足率

都道府県1万人あたり評価
徳島県12.2全国1位
鹿児島県9.3充実
鳥取県8.5充実
熊本県8.1充実
大分県7.8充実
全国平均 4.5
千葉県3.6不足
新潟県3.5不足
埼玉県3.2不足
神奈川県3.0不足
東京都1.4全国最低

退院後のリハビリを探している方へ

退院後のリハビリは主治医とケアマネジャーに相談して手配します。老健への入所はケアマネ経由、訪問リハは主治医の指示書が必要です。

リハビリ施設が少ない地域では、通所リハ(デイケア)が最も数が多いため、まずはデイケアから探すのが現実的です。訪問リハは待機になることもあるため、退院前から早めに動くことが重要です。

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分析手法
厚生労働省「介護サービス情報公表システム」に登録されている介護老人保健施設(4,121施設)・訪問リハビリテーション(5,091事業所)・通所リハビリテーション(7,737事業所)の合計16,949施設を使用。市区町村コードで集計し、総務省「令和2年国勢調査」の65歳以上人口と照合。政令指定都市は区を市に集約。ランキングは65歳以上人口1万人以上の市町村を対象。

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この記事は厚生労働省・総務省の公開データに基づく独自分析です。施設数は2026年3月時点の登録データであり、各施設の空き状況・受入状況は反映していません。
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