独自データ分析

特養の数に、
最大16倍の地域格差がある

全国8,543施設の特別養護老人ホームを市区町村別に集計。65歳以上人口あたりの施設数で比較すると、驚くほどの偏りが見えてきます。

8,543
全国の特養施設
16倍
施設数の最大格差

分析の背景

特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上の高齢者が入所できる公的な介護施設です。費用が比較的安いため入所希望者が多く、全国で約27万人が入所待ちとされています。

しかし「特養に入りにくい」のは全国一律ではありません。施設が集中している地域と、明らかに足りない地域があります。厚生労働省の事業所データ8,543施設を市区町村別に集計し、65歳以上人口との比率で本当に特養が足りない市を特定しました。

数字で見る格差

全国平均は、65歳以上1万人あたり2.2施設です。しかし市区町村単位で見ると極端な差があります。

最も少ない市
塩竈市(宮城県)
0.6
施設 / 1万人
最も多い市
小美玉市(茨城県)
10.1
施設 / 1万人

塩竈市と小美玉市を比べると、高齢者あたりの特養の数に約16倍の差があります。同じ東北・関東地方でこれだけの格差が存在します。

特養が足りない市 Top10

以下は、65歳以上人口が1万人以上の市のうち、人口あたりの特養施設数が少ない順のランキングです。

1
塩竈市
宮城県
65歳以上 17,801人
特養 1施設
1万人あたり 0.6
仙台市のベッドタウン。面積が小さく(約17km²)土地の確保が困難。1.8万人の高齢者に対して特養が1施設しかなく、全国ワーストの数値。仙台市の施設に流れている可能性が高い。
塩竈市の施設情報
2
多賀城市
宮城県
65歳以上 15,787人
特養 1施設
1万人あたり 0.6
塩竈市と同じく仙台近郊のコンパクトシティ。住宅地が中心で施設用地が限られる。宮城県は仙台市に施設が集中し、周辺市が空白になる「ドーナツ構造」が顕著。
多賀城市の施設情報
3
和光市
埼玉県
65歳以上 15,080人
特養 1施設
1万人あたり 0.7
東京メトロ有楽町線の始発駅。「介護先進市」として在宅介護に注力してきた自治体だが、特養の数は少ない。在宅介護が充実している裏返しとも言えるが、入所が必要になった場合の受け皿は薄い。
和光市の施設情報
4
富里市
千葉県
65歳以上 14,067人
特養 1施設
1万人あたり 0.7
成田市の南に隣接。成田市は1万人あたり5.4施設と全国トップクラスの充実度だが、隣の富里市は0.7と8分の1。隣り合う市でもこれだけの差がある。
富里市の施設情報
5
春日市
福岡県
65歳以上 24,914人
特養 2施設
1万人あたり 0.8
福岡市のベッドタウン。約2.5万人の高齢者に対して特養は2施設のみ。福岡市南部に接しており、福岡市内の施設への依存度が高いと推測される。
春日市の施設情報
6
浦添市
沖縄県
65歳以上 23,645人
特養 2施設
1万人あたり 0.8
那覇市に隣接する沖縄第3の都市。沖縄県全体が1万人あたり1.5施設と全国最低水準で、その中でも浦添市は突出して少ない。沖縄の高齢化は本土より遅れて進行しており、施設整備が追いついていない。
浦添市の施設情報
7
大野城市
福岡県
65歳以上 23,301人
特養 2施設
1万人あたり 0.9
春日市と同様、福岡市のベッドタウン。福岡都市圏の南部は軒並み特養が不足しており、春日市・大野城市・太宰府市が連続して低い。
大野城市の施設情報
8
貝塚市
大阪府
65歳以上 23,229人
特養 2施設
1万人あたり 0.9
大阪南部の泉州地域。大阪府全体が1万人あたり1.8施設と全国平均以下で、泉州地域は特に施設が薄い傾向がある。
貝塚市の施設情報
9
春日井市
愛知県
65歳以上 80,905人
特養 7施設
1万人あたり 0.9
名古屋市北東のベッドタウンで、Top10最大の8万人超の高齢者を抱える。7施設あるが人口規模に対して圧倒的に足りない。愛知県は1万人あたり1.6施設と全国ワースト2位の県。
春日井市の施設情報
10
あま市
愛知県
65歳以上 23,036人
特養 2施設
1万人あたり 0.9
名古屋市西部に隣接。春日井市と合わせて愛知県のベッドタウンが2市ランクイン。名古屋圏は在宅介護の比率が高い一方、入所施設が全国的に見て少ない地域。
あま市の施設情報

なぜ偏るのか — 3つの構造

構造1: 大都市のベッドタウンに足りない

Top10のうち8市が仙台・東京・名古屋・大阪・福岡の近郊都市。住宅地として発展した市は用地確保が難しく、住民は中心都市の施設に依存する。しかし中心都市の施設も満床で、結局「どこにも入れない」状況が生まれている。

構造2: 隣の市と極端な差がある

富里市(0.7施設)の隣の成田市は5.4施設。この8倍の差は、成田空港の広大な敷地周辺に施設が集積したことが一因。特養の立地は「その市の高齢者のため」だけでなく、用地や建設コストの都合で決まるため、行政区画をまたいだ偏りが常態化している。

構造3: 県単位で整備率が低い地域がある

沖縄県(1.5施設)、愛知県(1.6施設)、北海道(1.6施設)は県全体で全国平均の2.2を大きく下回る。これらの県では「隣の市に行けばある」とも限らず、県全体で施設が不足している構造的問題を抱えている。

都道府県別の特養充足率

65歳以上1万人あたりの特養施設数を都道府県別に見ると、上位と下位で2倍以上の差があります。

都道府県1万人あたり施設数評価
島根県3.6充実
茨城県3.3充実
群馬県3.2充実
秋田県3.0充実
鹿児島県3.0充実
全国平均 2.2
石川県2.0不足気味
神奈川県1.9不足気味
東京都1.8不足気味
大阪府1.8不足気味
北海道1.6不足
愛知県1.6不足
沖縄県1.5全国最低

特養を探している方へ

特養の入所待ちが長い地域にお住まいの方は、以下の選択肢も検討してみてください。

広域で探す — 特養は住民票のある市区町村以外の施設にも申し込めます。隣の市で施設数が多い場合は、そちらにも同時に申し込むことで入所の可能性が広がります。

他の施設も比較する — グループホーム(認知症対応)や介護老人保健施設(老健)など、特養以外の選択肢もあります。お住まいの地域でどのような施設が利用できるかは、エリアページでご確認いただけます。

お住まいの地域の介護施設を探す

特養・グループホーム・老健など、地域の施設情報を一覧で確認できます。

施設入所ガイドを見る
分析手法
厚生労働省「介護サービス情報公表システム」に登録されている介護老人福祉施設(特養)8,543施設のデータを使用。市区町村コードで集計し、総務省「令和2年国勢調査」の65歳以上人口と照合。ランキングは65歳以上人口1万人以上の市を対象とし、政令指定都市は市全体で集計。1万人あたり施設数 = 市内の特養施設数 ÷ 65歳以上人口 × 10,000 で算出。施設数のみの比較であり、各施設の定員規模は反映していません。

関連記事

配食チェーン空白エリア分析 配食サービスの届きにくい地域マップ 特養の入所条件と申込み方法
この記事は厚生労働省・総務省の公開データに基づく独自分析です。施設数は2026年3月時点の登録データであり、開設予定の施設は含まれていません。実際の入所待ち状況は施設の定員や退所率によって異なります。
この情報に誤りがありましたら → 訂正依頼フォーム